次に叶えるのは、リストの2つ目。
「2. 授業をサボって、二人で屋上に行く」。
学校に復帰して数日。私は相変わらず、教室ではみんなの期待に応える「明るくて完璧な莉緒ちゃん」を演じていた。だけど、5時間目のチャイムが鳴る直前、るいくんが私の席の横を通り過ぎる瞬間に、小さく目配せをしてくれた。
トクン、と胸が鳴る。
私たちは先生の目を盗んで教室を抜け出し、普段は立ち入り禁止の、静かな屋上へと続く階段を駆け上がった。
重い鉄の扉を押し開けると、冷たい冬の風と一緒に、眩しい午後の光が全身に降り注ぐ。
「はぁ……本当にサボっちゃった」
コンクリートの床に背中を預けて座り込み、私はいたずらが成功した子供みたいに笑った。
「お前、本当に嬉しそうだな」
るいくんが少し呆れたように笑いながら、私の隣に腰を下ろす。
「だって、ずっと息が詰まりそうだったんだもん」
私は膝を抱え、遠くの街並みを見つめた。
「るいくん。私が、最初に病院でるいくんに会った時、どうしてあんなに無理して笑ってたか……話したことなかったよね」
るいくんは何も言わず、ただ静かに私の言葉を待ってくれた。
「あの頃、私は重い病気で、お父さんもお母さんも毎日泣きそうな顔をして私を見てたの。私が少しでも辛そうな顔をすると、周りの大人たちがみんな、今にも壊れそうな顔をする。それが子供ながらに、すごく申し訳なくて、怖かった。……だから、『私は平気だよ』って伝えるために、ずっと無理して笑うようになったんだ」
いつの間にか、笑顔は私にとって、大切な人たちを傷つけないための「盾」になっていた。
高校に入ってからも、みんなが望む『完璧で元気な莉緒』の仮面を被り続けていたのは、その頃の癖が抜けなかったから。
「でもね、あの時……。お姉ちゃんを亡くしてボロボロだったるいくんに出会って、私は初めて『この子を笑わせたい』って、自分の心から笑えたんだよ」
あのひまわりを渡した日。私の作った不器用な笑顔が、るいくんの心を少しでも救えていたらいいな、とずっと思っていた。
私の告白を聞いていたるいくんは、ゆっくりと私の頭を引き寄せ、自分の肩にそっと寄り添わせた。
「……もう、誰のために笑う必要もないからな」
るいくんの声は、屋上の風に吹かれながらも、私の耳元に真っ直ぐに届いた。
「莉緒が泣きたい時は俺が一緒に泣くし、しんどい時は俺の前でだけ、その仮面を外せばいい。俺は、お前のどんな顔だって全部好きだから」
「……うん」
るいくんの制服の肩に額を押し当てると、じんわりと温かい涙が溢れて、彼の紺色のブレザーに小さな染みを作っていった。
でも、その涙は少しも悲しいものではなかった。
屋上のひだまりの中、私たちは静かに、だけど深く、お互いの存在を心に刻み込んでいた。
「2. 授業をサボって、二人で屋上に行く」。
学校に復帰して数日。私は相変わらず、教室ではみんなの期待に応える「明るくて完璧な莉緒ちゃん」を演じていた。だけど、5時間目のチャイムが鳴る直前、るいくんが私の席の横を通り過ぎる瞬間に、小さく目配せをしてくれた。
トクン、と胸が鳴る。
私たちは先生の目を盗んで教室を抜け出し、普段は立ち入り禁止の、静かな屋上へと続く階段を駆け上がった。
重い鉄の扉を押し開けると、冷たい冬の風と一緒に、眩しい午後の光が全身に降り注ぐ。
「はぁ……本当にサボっちゃった」
コンクリートの床に背中を預けて座り込み、私はいたずらが成功した子供みたいに笑った。
「お前、本当に嬉しそうだな」
るいくんが少し呆れたように笑いながら、私の隣に腰を下ろす。
「だって、ずっと息が詰まりそうだったんだもん」
私は膝を抱え、遠くの街並みを見つめた。
「るいくん。私が、最初に病院でるいくんに会った時、どうしてあんなに無理して笑ってたか……話したことなかったよね」
るいくんは何も言わず、ただ静かに私の言葉を待ってくれた。
「あの頃、私は重い病気で、お父さんもお母さんも毎日泣きそうな顔をして私を見てたの。私が少しでも辛そうな顔をすると、周りの大人たちがみんな、今にも壊れそうな顔をする。それが子供ながらに、すごく申し訳なくて、怖かった。……だから、『私は平気だよ』って伝えるために、ずっと無理して笑うようになったんだ」
いつの間にか、笑顔は私にとって、大切な人たちを傷つけないための「盾」になっていた。
高校に入ってからも、みんなが望む『完璧で元気な莉緒』の仮面を被り続けていたのは、その頃の癖が抜けなかったから。
「でもね、あの時……。お姉ちゃんを亡くしてボロボロだったるいくんに出会って、私は初めて『この子を笑わせたい』って、自分の心から笑えたんだよ」
あのひまわりを渡した日。私の作った不器用な笑顔が、るいくんの心を少しでも救えていたらいいな、とずっと思っていた。
私の告白を聞いていたるいくんは、ゆっくりと私の頭を引き寄せ、自分の肩にそっと寄り添わせた。
「……もう、誰のために笑う必要もないからな」
るいくんの声は、屋上の風に吹かれながらも、私の耳元に真っ直ぐに届いた。
「莉緒が泣きたい時は俺が一緒に泣くし、しんどい時は俺の前でだけ、その仮面を外せばいい。俺は、お前のどんな顔だって全部好きだから」
「……うん」
るいくんの制服の肩に額を押し当てると、じんわりと温かい涙が溢れて、彼の紺色のブレザーに小さな染みを作っていった。
でも、その涙は少しも悲しいものではなかった。
屋上のひだまりの中、私たちは静かに、だけど深く、お互いの存在を心に刻み込んでいた。

