君と、雨宿りの続きを

退院してから数日後。

私たちはさっそく、リストの最初のひとつを叶えるために、少し遠くの沿線まで電車に揺られていた。

記念すべき1つ目は――「1. 誰もいない冬の海を見る」。
「寒っ……! 莉緒、本当に大丈夫か? マフラーもっと巻きなよ」

るいくんが自分の首元からマフラーを外そうとするのを、私は慌てて手で制した。

「大丈夫だってば! ほら、見て、るいくん。本当に誰もいないよ!」

改札を抜けて少し歩くと、視界の先にあおくて広い冬の海が広がった。


夏の賑やかさとはかけ離れた、静かで、少し寂しいくらいに澄んだ水平線。冷たい風が、私たちの頬を容赦なく撫でていくけれど、心は不思議とぽかぽかしていた。
砂浜に降りると、ザザーンと規則正しい波の音だけが響く。

「すごいね……綺麗……」

私が感嘆の声を漏らすと、るいくんは私の隣に並んで、ポケットに手を突っ込みながら水平線を見つめた。

「まあ、悪くないな。誰もいない海って、なんか時間が止まってるみたいだ」

「ねえ、るいくん。足跡、並べて歩こうよ」

私はるいくんの手を引いて、波打ち際の少し濡れた砂の上を歩き出した。

私の小さな足跡と、るいくんの大きくて頼もしい足跡が、二本のラインになって砂浜に刻まれていく。波が時折それをさらっていこうとするけれど、私たちはそのたびに少し笑って、また新しい足跡を踏み直した。
「莉緒」
「ん?」
るいくんが不意に立ち止まり、私の手をそっと握り直した。

「……楽しんでるか?」

「うん! すっごく楽しい。るいくんと一緒だから、寒いのなんて忘れちゃうくらい」

私が満面の笑みを見せると、るいくんは少し安心したように目元を緩め、ポケットから小さなスマートフォンを取り出した。

「じゃあ、リストの『6. プリクラを撮る』は今日できないけど……代わりに、ここで写真撮ろうぜ」

「あ、いいね! 撮ろう!」

るいくんがカメラをインカメラに切り替え、私たちの姿を画面に収める。
背景には、どこまでも広がる冬の青い海。少し照れくさそうに笑うるいくんと、彼の肩に頭を寄せて、とびきりの笑顔を作る私。
カシャ、と静かなシャッター音が響いた。
限られた時間の中で、私たちは確かに、この世界の美しい瞬間を一つずつ刻み始めていた。