季節は流れ、冷たい風が吹く冬になっていた。
治療を続けていた私の病状は、残念ながら思わしくなかった。
「……残り、あと1年くらいだと思ってください」
先生から静かに告げられた余命。
真っ白な病室で、お父さんとお母さんが泣き崩れる中、私は不思議と冷静だった。ただ、頭に浮かんだのは、毎日ここに通ってくれるるいくんの顔だけ。
その日の夕方、やってきたるいくんに、私は努めて明るい声で切り出した。
「ねえ、るいくん。私、退院することにしたんだ」
「退院? でも、治療は……」
るいくんが驚いて目を見開く。私はアクリル板の向こうの彼に向かって、ふんわりと微笑みかけた。
「うん。先生と相談して、これからはお家で過ごすことにしたの。……残された1年、この白い病室で機械に囲まれて過ごすより、るいくんと一緒に、普通の高校生みたいにたくさん思い出を作りたい。私、目一杯この1年を楽しみたいんだ」
るいくんは絶句していた。彼なら、余命という言葉の重さを誰よりも知っている。また大切な人を失うかもしれない恐怖が、彼の表情を強張らせていくのが分かった。
「……莉緒。それって、治療を諦めるってことか?」
「諦めるんじゃないよ。私は、るいくんと生きる時間を選んだの」
私はアクリル板にそっと手を重ね、彼の目を見つめた。
「私のワガママ、聞いてくれる?」
るいくんは苦しそうに視線を落とし、きつく拳を握りしめた。けれど、やがてゆっくりと顔を上げると、その瞳には涙が溜まっていたけれど、力強い光が灯っていた。
「……分かった。莉緒がそうしたいなら、俺は全力でお前のワガママに付き合う。最高の1年にしよう」
そう言って、るいくんはアクリル板越しに優しく微笑んでくれた。
こうして、私たちの「余命1年」の、特別で愛おしい退院生活が始まろうとしていた。
治療を続けていた私の病状は、残念ながら思わしくなかった。
「……残り、あと1年くらいだと思ってください」
先生から静かに告げられた余命。
真っ白な病室で、お父さんとお母さんが泣き崩れる中、私は不思議と冷静だった。ただ、頭に浮かんだのは、毎日ここに通ってくれるるいくんの顔だけ。
その日の夕方、やってきたるいくんに、私は努めて明るい声で切り出した。
「ねえ、るいくん。私、退院することにしたんだ」
「退院? でも、治療は……」
るいくんが驚いて目を見開く。私はアクリル板の向こうの彼に向かって、ふんわりと微笑みかけた。
「うん。先生と相談して、これからはお家で過ごすことにしたの。……残された1年、この白い病室で機械に囲まれて過ごすより、るいくんと一緒に、普通の高校生みたいにたくさん思い出を作りたい。私、目一杯この1年を楽しみたいんだ」
るいくんは絶句していた。彼なら、余命という言葉の重さを誰よりも知っている。また大切な人を失うかもしれない恐怖が、彼の表情を強張らせていくのが分かった。
「……莉緒。それって、治療を諦めるってことか?」
「諦めるんじゃないよ。私は、るいくんと生きる時間を選んだの」
私はアクリル板にそっと手を重ね、彼の目を見つめた。
「私のワガママ、聞いてくれる?」
るいくんは苦しそうに視線を落とし、きつく拳を握りしめた。けれど、やがてゆっくりと顔を上げると、その瞳には涙が溜まっていたけれど、力強い光が灯っていた。
「……分かった。莉緒がそうしたいなら、俺は全力でお前のワガママに付き合う。最高の1年にしよう」
そう言って、るいくんはアクリル板越しに優しく微笑んでくれた。
こうして、私たちの「余命1年」の、特別で愛おしい退院生活が始まろうとしていた。

