「……急性白血病、ですか」
医師の口から告げられたその病名は、俺の頭の中を真っ白にするのに十分すぎる響きを持っていた。
お姉ちゃんの時とは違う病名。だけど、それが意味する重さは同じだった。血液の癌。ドラマや小説の中でしか聞いたことのなかったその言葉が、今、俺の目の前にある莉緒の現実として突きつけられている。
「現在、詳しい検査を進めています。すぐに治療を開始しなければならない状態で、まずは無菌室での抗がん剤治療から始めることになると思います」
医師の淡々とした説明が、どこか遠くの世界の出来事のように耳を通り抜けていく。
俺はただ、呆然と自分の両手を見つめることしかできなかった。
運動会のトラックで、あれほど冷たくなって、必死に俺の制服を掴んでいた莉緒の小さな手。あいつはどんなに怖かっただろう。どんなに苦しかっただろう。
「……面会は、できますか」
絞り出すような俺の声に、医師は少し痛ましそうな目を向けた。
「ご家族が到着されたら、短時間だけなら。ただ、彼女は今、ひどい貧血と倦怠感でひどく消耗しています。動揺させるようなことは避けてあげてください」
「分かってます」
そう答えるのが精一杯だった。
廊下の長椅子に腰掛け、天井の白い蛍光灯を見つめる。
奪わないでくれと、心の中で何度も叫んだ神様は、やっぱり俺の願いなんて聞いてはくれなかった。
だけど、お姉ちゃんの時とは、決定的に違うことがひとつだけあった。
あの頃の俺は、ただ泣いて、病室に入るのを怖がることしかできない無力な子供だった。
でも、今は違う。
(俺はもう、逃げない)
どんなに怖くても、どんなに未来が見えなくても、今度は莉緒の手を最後まで離さない。
ガチャリ、と処置室の重い扉が開き、莉緒のベッドが静かに運び出されていくのが見えた。
医師の口から告げられたその病名は、俺の頭の中を真っ白にするのに十分すぎる響きを持っていた。
お姉ちゃんの時とは違う病名。だけど、それが意味する重さは同じだった。血液の癌。ドラマや小説の中でしか聞いたことのなかったその言葉が、今、俺の目の前にある莉緒の現実として突きつけられている。
「現在、詳しい検査を進めています。すぐに治療を開始しなければならない状態で、まずは無菌室での抗がん剤治療から始めることになると思います」
医師の淡々とした説明が、どこか遠くの世界の出来事のように耳を通り抜けていく。
俺はただ、呆然と自分の両手を見つめることしかできなかった。
運動会のトラックで、あれほど冷たくなって、必死に俺の制服を掴んでいた莉緒の小さな手。あいつはどんなに怖かっただろう。どんなに苦しかっただろう。
「……面会は、できますか」
絞り出すような俺の声に、医師は少し痛ましそうな目を向けた。
「ご家族が到着されたら、短時間だけなら。ただ、彼女は今、ひどい貧血と倦怠感でひどく消耗しています。動揺させるようなことは避けてあげてください」
「分かってます」
そう答えるのが精一杯だった。
廊下の長椅子に腰掛け、天井の白い蛍光灯を見つめる。
奪わないでくれと、心の中で何度も叫んだ神様は、やっぱり俺の願いなんて聞いてはくれなかった。
だけど、お姉ちゃんの時とは、決定的に違うことがひとつだけあった。
あの頃の俺は、ただ泣いて、病室に入るのを怖がることしかできない無力な子供だった。
でも、今は違う。
(俺はもう、逃げない)
どんなに怖くても、どんなに未来が見えなくても、今度は莉緒の手を最後まで離さない。
ガチャリ、と処置室の重い扉が開き、莉緒のベッドが静かに運び出されていくのが見えた。

