同居人がめんどくさい

「お姉さん、疲れてんね。」

突然、弾む女性の声が隣から聞こえた。

その声にビクッと体を震わす。

見ると、3人がけのベンチの隣2席に女性と男性がそれぞれ座って、こちらを見ながら笑っている。

「え...」

突然の出来事に反応が追いつかない。

さっきまで、次の行き先を決める事に精一杯で、周りのことなど何も見えていなかった。

スマホに集中していて他に意識がいかず失敗した事は前にも何度かある。

これもそのうちの一つになるかもしれない。

だって、この男女2人がいつ隣の席に座ったのかも全くわからない。

「えっと...」

どう反応したものかと考えながら、女性の方を見る。

「あ、ごめんね?困らせるつもりはなかったんだけどね、なんかため息すごかったからさ。」

そう言って、女性はアハハと豪快に笑う。

女性の奥に座っている男性もその言葉につられて笑う。

仕草や雰囲気からパワフルな印象を受ける女性とは異なり、男性の方は口数が少なく、女性の後ろで静かに微笑んでいるという感じだ。

服装も対照的で、女性の方はエスニック系の小物をコーディネートのあちこちに散りばめ、主張する個々のアイテム同士を上手く掛け合わせた掛け算コーデのような雰囲気がある。

エスニック系の雑貨屋の店員に居そうだと思った。

その一方で、男性の服装は至ってシンプルで、清潔感の漂うシャツとスラックスに、メガネという落ち着いた好青年というような雰囲気を醸し出している。