未完成のティラミス

「こんにちはー!」

午後15時。ランチ営業を終えたばかりの店内に智香の元気な声が響く。

「智香ちゃん、いらっしゃい。荷物多いね」
「笹井さん、お世話になります。今日はちょこっと撮りたいだけなんで、カメラさんなしで、私が撮影するんで、こんなに大荷物になっちゃいました。1時間くらいで終わると思いますので。」

黒いリュックを背負い、片方の腕からは大きな布製のバッグをかけ、もう片方の手で別のバッグを持っている。その小さな体のどこにそれだけの荷物を持ち運ぶ体力があるのか、と思いながら圭太は近づいて言った。

「お荷物、お預かりします!」
「あ、圭太くん。こんにちは。そこらへんに置かせてもらうから大丈夫だよ」

そう言って差し出した手を智香にするりと交わされると、圭太は肩を落とす。いつもこのパターンで会話が進まないのだ。智香の自分で何でもこなそうと努力する姿に惹かれつつも、何かしてあげられることがあったらいいのに、と圭太は思う。

「智香ちゃん、時間に余裕あるならまかない食べていかない?今日撮ってもらう予定のサバを使ったものもあるから。味見もかねて」

テーブルの上にパソコンやカメラを並べて準備を始めていた智香に哲也が声をかけた。

「えっ、いいんですか!」

ぱっと表情を明るくする智香に哲也はもちろん、笹井も笑った。

「もちろん。内田くん、席を用意してあげて」
「はい!」

哲也に声をかけられた圭太は元気よく返事をすると智香のためにきれいな椅子一つ用意して、スタッフたちの囲むテーブル席に並べた。たとえまかないであっても、職場の休憩時間であっても、気になる子と食事ができるというのは嬉しいものだ。