「パーフェクト回答、デスネ!」
「ワイン飲んだことないって言って入社してきたくせにー。今度飲みに行くぞ」
仲間たちから褒められて、圭太は照れながらも、嬉しい気持ちになった。毎日の勉強が少しずつ身についているのだと思ったら。そしてそれをちゃんと智香の目の前で見てもらえたから。
「内田は最近は料理の勉強もしているんだよね」
一人の調理スタッフが言った。ワインだけでなく、料理についても少しずつ学んでいきたいなと思っていた。もちろん自分の目指すところはシェフではないけれど、料理を知ることはきっと役に立つと思っていた。
「その、技術は全くで…」
「早朝に石崎シェフについて市場に行ったり、簡単な料理習ったり頑張ってるじゃん。隠す必要ないよ!仕事熱心なのはいいことだし、食べさせたい相手ができたならそれもいいことだし」
食べさせたい相手。
そう言われた瞬間、圭太は自分の中の熱が顔に集中するのを感じる。子どもの頃からそうだ。隠したいと思うことが強ければ強いほど、熱は顔に集中し、その結果、周囲にばれてしまう。
「いや、その」
食べさせたい相手がいるとこの場で言えないのはもちろん、いないと言い切ることもできず、圭太の視線は泳ぐ。
「そうそう、智香ちゃんが来る日は出勤時間はやいんすよ、こいつ」
調理スタッフ一の陽気な男に両手でぐっと肩を掴まれて、智香のほうに体を向けられた圭太は、もう完全に逃げ場がなかった。その隣でフラヴィオがアムール、ブラヴォーと微笑んでワイングラスを傾ける。
「やめてくださいよ!」
圭太は視線をテーブルに向ける。こんな状況で智香を見ることができるほど強くない。もっとも、そんなだからこそ、地道に料理の技術を磨こうとしたり、少し早く出勤して身だしなみに気を付けたりするしかできない男でもあるのだが。それでも意図しない形で自分の気持ちが伝わるのだけは避けたかった。
その場にいるスタッフたちの視線を一身に受ける智香は、困惑した顔をして強い口調で言った。
「私は年下に頼られるよりも、もっと頼れそうな石崎シェフとかフラヴィオみたいにお腹いっぱい食べさせてくれる男性がいいんです!」
その言葉にどこか怪しい、おかしな雰囲気が漂う。
それに気づいてか、気づかずか、フラヴィオが言った。
「ワタシは子供に興味アリマセン~アヤノのように大人の色気が」
「ちょ、だまってなさいよ、フラヴィオ!」
フラヴィオと綾乃が漫才のようにやりとりをしていると、智香は居心地の悪さにその場を離れようと、立ち上がったそのときだった。
「智香さん!」
自分の声に振り向いてもらったものの、その手を掴むことなどとうていできない圭太は、やり場のない両手をもぞもぞと重ね合わせて、申し訳なさそうにしている。
そして圭太を見る智香もまた、申し訳なさそうな顔で圭太を見ると、しっかりとした口調で言った。
「仕事、しようよ。まだまだやることたくさんあるでしょう」
圭太はどんな言葉をかけていいのかわからないまま、智香がパソコンに向かっているのを見つめるしかできない。
そしてただただ、まだ幼い、半人前の自分に悔しくなるだけだった。
「ワイン飲んだことないって言って入社してきたくせにー。今度飲みに行くぞ」
仲間たちから褒められて、圭太は照れながらも、嬉しい気持ちになった。毎日の勉強が少しずつ身についているのだと思ったら。そしてそれをちゃんと智香の目の前で見てもらえたから。
「内田は最近は料理の勉強もしているんだよね」
一人の調理スタッフが言った。ワインだけでなく、料理についても少しずつ学んでいきたいなと思っていた。もちろん自分の目指すところはシェフではないけれど、料理を知ることはきっと役に立つと思っていた。
「その、技術は全くで…」
「早朝に石崎シェフについて市場に行ったり、簡単な料理習ったり頑張ってるじゃん。隠す必要ないよ!仕事熱心なのはいいことだし、食べさせたい相手ができたならそれもいいことだし」
食べさせたい相手。
そう言われた瞬間、圭太は自分の中の熱が顔に集中するのを感じる。子どもの頃からそうだ。隠したいと思うことが強ければ強いほど、熱は顔に集中し、その結果、周囲にばれてしまう。
「いや、その」
食べさせたい相手がいるとこの場で言えないのはもちろん、いないと言い切ることもできず、圭太の視線は泳ぐ。
「そうそう、智香ちゃんが来る日は出勤時間はやいんすよ、こいつ」
調理スタッフ一の陽気な男に両手でぐっと肩を掴まれて、智香のほうに体を向けられた圭太は、もう完全に逃げ場がなかった。その隣でフラヴィオがアムール、ブラヴォーと微笑んでワイングラスを傾ける。
「やめてくださいよ!」
圭太は視線をテーブルに向ける。こんな状況で智香を見ることができるほど強くない。もっとも、そんなだからこそ、地道に料理の技術を磨こうとしたり、少し早く出勤して身だしなみに気を付けたりするしかできない男でもあるのだが。それでも意図しない形で自分の気持ちが伝わるのだけは避けたかった。
その場にいるスタッフたちの視線を一身に受ける智香は、困惑した顔をして強い口調で言った。
「私は年下に頼られるよりも、もっと頼れそうな石崎シェフとかフラヴィオみたいにお腹いっぱい食べさせてくれる男性がいいんです!」
その言葉にどこか怪しい、おかしな雰囲気が漂う。
それに気づいてか、気づかずか、フラヴィオが言った。
「ワタシは子供に興味アリマセン~アヤノのように大人の色気が」
「ちょ、だまってなさいよ、フラヴィオ!」
フラヴィオと綾乃が漫才のようにやりとりをしていると、智香は居心地の悪さにその場を離れようと、立ち上がったそのときだった。
「智香さん!」
自分の声に振り向いてもらったものの、その手を掴むことなどとうていできない圭太は、やり場のない両手をもぞもぞと重ね合わせて、申し訳なさそうにしている。
そして圭太を見る智香もまた、申し訳なさそうな顔で圭太を見ると、しっかりとした口調で言った。
「仕事、しようよ。まだまだやることたくさんあるでしょう」
圭太はどんな言葉をかけていいのかわからないまま、智香がパソコンに向かっているのを見つめるしかできない。
そしてただただ、まだ幼い、半人前の自分に悔しくなるだけだった。



