梅村美優(うめむらみゆ)、いまだに少女漫画のような甘いファーストキスを夢見る、華の高校二年生だ。
いつか訪れるその日は、夕暮れ時の放課後か、それともイルミネーションが綺麗なデートの帰り道か。
そんなロマンチックな妄想を日夜膨らませていた私だったけれど、現実は非情である。
お昼ご飯を食べ終わり、午後の授業が始まるまでの自由時間。
私は今、人生最大のピンチに陥っていた。
「……美優、ちょっとこっち来て」
そう言って、クラスメイトの視線を避けるように私の手を引いたのは、拓海(たくみ)くん。
今年の春に熱烈な告白をしてくれて付き合い始めた、自慢の彼氏だ。
連れてこられたのは、昼間でも人通りが少ない旧校舎の渡り廊下。
しんと静まり返った空間に、窓から差し込む優しい木漏れ日が床を照らしている。
「あのさ、美優……」
拓海くんが、一歩、私との距離を詰めた。
心臓がドキンと大きな音を立てる。
見上げる拓海くんの瞳は真剣そのもので、長くて綺麗なまつ毛がゆっくりと伏せられていく。
ふたりの距離が、じわじわと、でも確実に狭まっていく。シチュエーションは完璧。雰囲気も最高。
少女漫画なら、ここでヒロインが可愛く目を閉じる定番のシーンだ。
別にそこまでは何の問題もない。
少女漫画オタクの私にとっては、むしろ待ち望んでいた大好物のシチュエーションのはずだった。
では、なぜか。
夢にまで見た瞬間が目の前にあるというのに、なぜ私の心臓は、ときめきではなく「恐怖」で爆発しそうになっているのか。
その理由を、今から説明しよう。
いつか訪れるその日は、夕暮れ時の放課後か、それともイルミネーションが綺麗なデートの帰り道か。
そんなロマンチックな妄想を日夜膨らませていた私だったけれど、現実は非情である。
お昼ご飯を食べ終わり、午後の授業が始まるまでの自由時間。
私は今、人生最大のピンチに陥っていた。
「……美優、ちょっとこっち来て」
そう言って、クラスメイトの視線を避けるように私の手を引いたのは、拓海(たくみ)くん。
今年の春に熱烈な告白をしてくれて付き合い始めた、自慢の彼氏だ。
連れてこられたのは、昼間でも人通りが少ない旧校舎の渡り廊下。
しんと静まり返った空間に、窓から差し込む優しい木漏れ日が床を照らしている。
「あのさ、美優……」
拓海くんが、一歩、私との距離を詰めた。
心臓がドキンと大きな音を立てる。
見上げる拓海くんの瞳は真剣そのもので、長くて綺麗なまつ毛がゆっくりと伏せられていく。
ふたりの距離が、じわじわと、でも確実に狭まっていく。シチュエーションは完璧。雰囲気も最高。
少女漫画なら、ここでヒロインが可愛く目を閉じる定番のシーンだ。
別にそこまでは何の問題もない。
少女漫画オタクの私にとっては、むしろ待ち望んでいた大好物のシチュエーションのはずだった。
では、なぜか。
夢にまで見た瞬間が目の前にあるというのに、なぜ私の心臓は、ときめきではなく「恐怖」で爆発しそうになっているのか。
その理由を、今から説明しよう。

