レディ・クロックの夏休み〜働き者の令嬢は、婚約破棄により「お休み」いたします?!〜

「一体何事だ!」

 日が昇り始める時刻。保養区郊外にあるルロワの屋敷に、兵士が押し寄せていた。
 真っ白なネグリジェに、寝癖がついたままのルロワは怒りで体を震わせている。
 今日は教会で結婚式のはずだ。ベルナルド家の次男坊のお下がりであるが、実に使い勝手の良い令嬢を、妻にできるはずであった。
それだというのに、なぜ屋敷にむさ苦しい兵士が押し寄せているというのか!

「パトリック・ルロワ伯爵。重複婚と脱税の容疑で逮捕する」

「はぁ?! なんだと!」

 取り押さえられそうになりルロワは手を払うも、屈強な兵士に敵うはずもなかった。
 あっという間に彼は拘束された。

 その様子を、遠くから見つめる人影があった。影は伯爵が連行されるのを見届けると、再び暗闇に姿を消した。