冬を迎えた大陸に、とある令嬢が出版した書籍が話題になった。
彼女の名前は、アナベル・バーンズ。
成り上がり貴族と悪名高いバーンズ伯爵家の長子で、チョコレート色の長髪が美しい令嬢だ。
時に度が過ぎるほど真面目な性格で、努力することに一切手を抜かない。休日も返上し、親の仕事の手伝いに勉強、課外活動などに取り組む彼女は、0.1秒も時間を無駄にしないよう管理を、厳格に務めてきた。
その厳格さは時計と変わらないと、周囲に『レディ・クロック』と呼ばれている。
それがアナベルという令嬢である。
今冬に出版された彼女の書籍は、その構成や文体に彼女の気質が現れていたものの、驚きのテーマが取り上げられていた。
それがなんと『休日の過ごし方』。
ある地区の観光スポットをメインに取り上げ、時間がない人や、遊び方が分からない人のために、どう楽しめるかを具体的に書かれていたのだ。
『時計』と呼ばれる令嬢が取り上げる『休み方』とは?
多くの者たちの興味を引いた。
そして働き詰めで少しの時間で気分転換したい者や、次のバカンス地を考えている者にも求められた。そして「面白い」「自分も楽しんでみたい」「休みを取りたい」と評判が、評判を呼んでいる。
「けどこれをあの、レディ・クロックが書いたとはな」
「ねぇ!驚いたわ」
今まで『休み』や『遊び』など蚊帳の外であった彼女に、一体何が起こったのか。
それを語るには数ヶ月前まで、大地に熱がこもり始める季節まで遡る。
すべての始まりーー実はずいぶん昔のことから紐づいていたのだがーー、アナベル・バーンズの運命は夏の訪れとともにやってきた。

