第3話 「忘れられない笑顔」
花音を自宅まで送り届けると、蒼真は車を発進させた。
バックミラーには、玄関へ入っていく彼女の姿が映る。
ドアが閉まるまで見届けるのは、もう何年も前からの習慣だった。
「今日も笑ってくれた……。」
その小さな笑顔だけで、胸が満たされる。
誰にも理解されないかもしれない。
それでも彼にとって、花音は生きる理由だった。
信号待ちで財布を開く。
そこには、少し色あせた一枚の写真が入っていた。
高校時代の文化祭。
大勢の生徒が写る集合写真。
その端に、小さく笑う花音の姿がある。
蒼真はそっと指先でその笑顔をなぞった。
「やっと……隣にいられる。」
あの日。
誰にも必要とされないと思っていた自分に、手を差し伸べてくれた女の子。
『大丈夫?』
たった、その一言だった。
なのに、心の奥に張りつめていた糸が切れそうになった。
泣くこともできなかった自分が、初めて「救われたい」と思った瞬間だった。
花音は覚えていない。
それでいい。
覚えていなくてもいい。
あの日、自分が救われたことだけは変わらない。
だから誓った。
いつか彼女を守れる男になると。
誰よりも努力して、誰よりも強くなって、彼女が安心して笑える場所をつくろうと。
その想いだけで走り続けてきた。
「もう二度と……失わない。」
静かな車内に、蒼真の声だけが響く。
その瞳は優しく、そしてどこか切なかった。
彼はまだ知らない。
運命は、再会だけでは終わらないことを。
二人の恋には、あの日の優しさだけでは乗り越えられない試練が待っていることを。
花音を自宅まで送り届けると、蒼真は車を発進させた。
バックミラーには、玄関へ入っていく彼女の姿が映る。
ドアが閉まるまで見届けるのは、もう何年も前からの習慣だった。
「今日も笑ってくれた……。」
その小さな笑顔だけで、胸が満たされる。
誰にも理解されないかもしれない。
それでも彼にとって、花音は生きる理由だった。
信号待ちで財布を開く。
そこには、少し色あせた一枚の写真が入っていた。
高校時代の文化祭。
大勢の生徒が写る集合写真。
その端に、小さく笑う花音の姿がある。
蒼真はそっと指先でその笑顔をなぞった。
「やっと……隣にいられる。」
あの日。
誰にも必要とされないと思っていた自分に、手を差し伸べてくれた女の子。
『大丈夫?』
たった、その一言だった。
なのに、心の奥に張りつめていた糸が切れそうになった。
泣くこともできなかった自分が、初めて「救われたい」と思った瞬間だった。
花音は覚えていない。
それでいい。
覚えていなくてもいい。
あの日、自分が救われたことだけは変わらない。
だから誓った。
いつか彼女を守れる男になると。
誰よりも努力して、誰よりも強くなって、彼女が安心して笑える場所をつくろうと。
その想いだけで走り続けてきた。
「もう二度と……失わない。」
静かな車内に、蒼真の声だけが響く。
その瞳は優しく、そしてどこか切なかった。
彼はまだ知らない。
運命は、再会だけでは終わらないことを。
二人の恋には、あの日の優しさだけでは乗り越えられない試練が待っていることを。


