好きになったのは大嫌いな先生



家に着いたのは20時近く。
外からアパートの自分の部屋の窓を見ると明かりがついている。

最初は誰!?と思ったけど、よくよく考えたら愁くんしかいないよね。

家の玄関を開けるとおかえりーと声が聞こえる。
今にはやっぱり愁くんがいた。

「ずいぶん遅かったね。仕事?」

「うん。引き継ぎとかやることたくさんで。それより!勝手に家入らないでよね!?」

「いいじゃん、別に。一緒に夜ご飯食べる約束もしてたんだし。」

「…お腹全然減らない。」

「俺の前でちゃんと食べないと、どうなるか分かってるよね?」

穏やかだった愁くんの顔が一瞬にして真顔になって、怖さで心臓が速くなる。反抗したら本気で入院させられそうだから大人しく。

「ちゃんと食べます。」

小声で答えて、しゅうくんが買ってきてくれたご飯を無理やり口の中に詰め込む。

「で?今日はなんかあったの?」

「え?なんのこと?」

「美奈、今日はいつもより落ち込んだ顔してるから。具合悪いのももちろんあるだろうけど、なんか別にあったんじゃないの?」

「ほんと愁くんには隠し事できないね。実は担任降ろされちゃってね。…まぁこんだけ休んでるし、これからもまだまだ休むだろうから当たり前なんだけどね。こんな担任無責任だし、子供達が可哀想か。…うちのクラスの子供達は本当に可愛くて、自慢の生徒達で、まだまだ担任頑張りたかったんだけどな。」

気を抜くと泣いてしまいそうで、誤魔化すようにご飯をかき込む。

「この前の検診で学校行った時、生徒達みんなが美奈のこと好きなんだろうなっていうの伝わってきてたよ。俺からは美奈がすごくいい先生に見えた。」

「そんなことないよ。…結果子供達のこと最後まで見れてないんだもん。先生失格だよ。」

「また頑張ればいい。美奈は絶対また元気なるんだから、そしたらまた頑張ればいい。今は自分の体を大事にしてあげよう。」

「…うん。」

仕方ないのはわかっているけど、自分の無能さに呆れて、悔しくて、今日はモヤモヤした気持ちが晴れることはなかった。