アウトレットモールまでは、車で2時間ほどの距離だ。
そのほとんどの時間を、助手席から横目で広瀬君の左腕を眺めて過ごした。ハンドルを握る腕まくり男子というのは格別だった。
右へ左へと車を操るたびに前腕の腱がくっきりと浮かび上がり、力強さを感じる。二回折り返された袖口が、その動きをいっそう魅力的にしていて見飽きることがなかった。
気が付けば、車はアウトレットの駐車場に滑り込んでいた。
車を降りると、休日らしい賑わいが私たちを迎えてくれる。
いくつか店を見て回ったものの、二人の意見は結局、最初に目を留めた一着で一致した。広瀬君はそのシャツを手に取って、試着室に入っている。
「どうかな?」
カーテンが開いて、淡いサックスブルーのシャツを着た彼が立っていた。
「うん、やっぱり似合う」
間髪入れずにうなずいた。細身のデザインはすらりとした広瀬君の体型によく似合う。
けれど、私の決め手はカフスの裏の縫製だった。表からは見えないカフスの裏に、ネイビーのパイピングが丁寧にあしらわれている。見えないところにも気を配る、そのこだわりが気に入った。彼が腕まくりをすれば、きっと、もっと映える。
そう思った刹那。
広瀬君が、シャツの左袖を一折りした。引き締まった手首と、無骨なクロノグラフの時計がのぞく。もちろん、カフスの裏の、紺のラインも。
「こんな感じ、どう?」
言いながら、ズボンの両ポケットに手を入れて見せた。
息が止まる。
軽く肘を曲げた立ち姿は、店頭のポスターから抜け出してきたみたいだ。
「うん、いい。すっごく、いい!」
思わず身を乗り出して褒めた私を見て、広瀬君が喉の奥を鳴らして笑った。
「亜矢……その顔、かわいすぎ」
彼は、腕まくりした袖へ目をやった。
「やっぱりこのシャツで正解だったな」
はしゃぐ私を見て、広瀬君も嬉しそうにしてくれる。
彼といると、二人の間に流れる空気までもが優しく、愛おしく思えた。
買い物を終えて店の外に出ると、夕暮れの風が心地よく頬を撫でる。
紙袋の中には、ふたりで選んだ、一着のシャツ。
けれど――
数日後、このサックスブルーが赤に染まることになるなんて、このときの私たちは知る由もなかった。
そのほとんどの時間を、助手席から横目で広瀬君の左腕を眺めて過ごした。ハンドルを握る腕まくり男子というのは格別だった。
右へ左へと車を操るたびに前腕の腱がくっきりと浮かび上がり、力強さを感じる。二回折り返された袖口が、その動きをいっそう魅力的にしていて見飽きることがなかった。
気が付けば、車はアウトレットの駐車場に滑り込んでいた。
車を降りると、休日らしい賑わいが私たちを迎えてくれる。
いくつか店を見て回ったものの、二人の意見は結局、最初に目を留めた一着で一致した。広瀬君はそのシャツを手に取って、試着室に入っている。
「どうかな?」
カーテンが開いて、淡いサックスブルーのシャツを着た彼が立っていた。
「うん、やっぱり似合う」
間髪入れずにうなずいた。細身のデザインはすらりとした広瀬君の体型によく似合う。
けれど、私の決め手はカフスの裏の縫製だった。表からは見えないカフスの裏に、ネイビーのパイピングが丁寧にあしらわれている。見えないところにも気を配る、そのこだわりが気に入った。彼が腕まくりをすれば、きっと、もっと映える。
そう思った刹那。
広瀬君が、シャツの左袖を一折りした。引き締まった手首と、無骨なクロノグラフの時計がのぞく。もちろん、カフスの裏の、紺のラインも。
「こんな感じ、どう?」
言いながら、ズボンの両ポケットに手を入れて見せた。
息が止まる。
軽く肘を曲げた立ち姿は、店頭のポスターから抜け出してきたみたいだ。
「うん、いい。すっごく、いい!」
思わず身を乗り出して褒めた私を見て、広瀬君が喉の奥を鳴らして笑った。
「亜矢……その顔、かわいすぎ」
彼は、腕まくりした袖へ目をやった。
「やっぱりこのシャツで正解だったな」
はしゃぐ私を見て、広瀬君も嬉しそうにしてくれる。
彼といると、二人の間に流れる空気までもが優しく、愛おしく思えた。
買い物を終えて店の外に出ると、夕暮れの風が心地よく頬を撫でる。
紙袋の中には、ふたりで選んだ、一着のシャツ。
けれど――
数日後、このサックスブルーが赤に染まることになるなんて、このときの私たちは知る由もなかった。


