−狂兎の檻−

やっぱり、私に向かって来てる――。

頭が真っ白になっていると、白いパーカーの男の子は私の目の前でぴたりと立ち止まった。そして、小首をこてんと傾げると、可愛らしくにっこりと笑った。

「僕、凪。よろしくね!」

え……。

なんで、私? さっきまで窓の外をぼんやり眺めていた無気力そうな雰囲気はどこへ行ったのか。今はにこにこと笑っていて、その笑顔は驚くほど可愛らしい。

「……美月です。よろしく、お願いします」

思わず返事をしてしまった。

その瞬間、教室中の視線が一斉に私へ集まる。
痛い。
どうして、みんな見てるの……。
目立たない。

それが、私の生き方だったのに――。