「……ちょっと、天海くん、冗談きついって! そういうのは、ファンの女子たちに言ってあげな!」
ガタタッ!って椅子引いて立ち上がって、スクールバッグをひったくるみたいに抱えた。
今すぐここから逃げないと、心臓が爆発して死ぬ。
「あ、待って。逃げようとしてる?」
天海くん、私が逃げるの分かってたみたいに、素早く私の手首を掴んできた。
男の子の少しだけゴツゴツした熱い手が、私の手首をがっちり捕まえる。
「ちょっと、離してよ!」
「離さない。冗談じゃないし。俺、結構マジなんだけど」
天海くんの声が、一段低くなった。
いつもより低くて甘い声が直で耳に入ってきて、ガチで足の力が抜けそう。
「な、何がマジなの!? 意味分かんない! 天海くん、頭バグった?」
パニクって叫ぶ私を、天海くんは困ったように、でもなんか楽しそうに見てる。
「バグってないって。ずっと考えてたんだよね。佐野ちゃん、男子と全然話さないし、男の子に免疫なさそうだから……他の男に騙されたりしたら嫌だなーって」
「だからって、なんで天海くんがキスのしかた教える話になるわけ!?」
「だって、他のやつに教えられるくらいなら、俺が教えた方がいいじゃん」
そのセリフ、あまりにも独占欲強めで、私のキャパを完全に超えてた。
誰にでも優しい天海くん。クラスの人気者の天海くん。
そんな彼が、なんで私にこんな執着するみたいな目を向けてるの?

