「……で、天海くんはなんで教室戻ってきたわけ? 忘れ物でもした?」
ペンケースにシャーペンをガサッと戻しながら聞いてみたら、天海くんは自分の机にちょっと腰かける感じで、ふっと笑った。
「ううん、忘れ物じゃなーい……佐野ちゃんがまだ残ってるの見えたからさ」
「は? 私?」
パチン、ってペンケースのチャックを閉める音が、シーンとした放課後の教室に響く。
天海くんを見ると、窓からの夕日に照らされていて、少女漫画の1ページかよってくらいキラキラしてる。
相変わらず、ムカつくレベルで顔がいい。
「そう、佐野ちゃん。いっつも日直のとき真面目に残って日誌書いてんじゃん。だから、まだいるかなーと思って」
「ストーカーじゃん」
思わず口から出た冗談に、天海くんは「ひどっ」って言って、いたずらっぽく笑った。
本当にこの人、私みたいな地味めな女子相手でも、全然壁作らないで楽しそうに話してくれるんだよね。
女子たちがギャーギャー騒ぐ理由も分かる。
「ストーカーじゃないし。ただの気まぐれ……ねぇ、佐野ちゃんってさ」
天海くんが、すっと私の方に体を寄せてきた。
なんか、せっけんみたいな、すごくいい匂いがふわっとして、ちょっと焦る。
「……何?」
「恋愛とか、興味あったりする?」
急に何言い出すわけ?
一瞬だけ脳みそフリーズした。

