しかし、運命の神様は、私にどこまでも意地悪だった。
いい意味でも悪い意味でも波乱に満ちた登校初日の授業が、すべて終わった放課後。
私は「やっと帰れる!」と歓喜の涙を流しながら、カバンを肩にかけた。
家に戻って、早くウィッグを外して思いっきりゴロゴロしたい。
「あ、ツムギくん! 放課後、一緒にカラオケ――」
「ごめんね、今日はちょっと外せない用事があって。また明日、絶対ね」
女子たちの誘いを優しい王子様スマイルで丁重にお断りし、私は逃げるように教室を飛び出した。
「ふぅ……。これでやっと一安心……」
足早に廊下を歩き、1階の昇降口へと向かう。
しかし、階段を降りた先の人気のない渡り廊下で、背後から、聞き覚えのある低い声が私を呼び止めた。
「おい、小鳥遊ツムギ」
「……え?」
振り返ると、そこにはカバンを片手に持った、隣の席の一ノ瀬くんが立っていた。
夕日に照らされた彼の影が、私に向かって長く伸びている。
「な、何かな? 一ノ瀬くん。まだ僕に何か用?」
私は慌てて、いつもの低めの『王子様ボイス』を作って微笑みかけた。
けれど、一ノ瀬くんは一切表情を変えないまま、ゆっくりと、私との距離を詰めてくる。
一歩、また一歩。壁際に追い詰められ、私の背中が冷たい壁に当たった。
一ノ瀬くんは、私のすぐ目の前で足を止めると、逃げ道を塞ぐように、私の耳元の壁にドン、と手を突いた。
いわゆる――『壁ドン』の状態だ。
「え、一ノ瀬くん……っ!?」
あまりの至近距離に、私の心臓が爆発しそうなほど跳ね上がる。
いい意味でも悪い意味でも波乱に満ちた登校初日の授業が、すべて終わった放課後。
私は「やっと帰れる!」と歓喜の涙を流しながら、カバンを肩にかけた。
家に戻って、早くウィッグを外して思いっきりゴロゴロしたい。
「あ、ツムギくん! 放課後、一緒にカラオケ――」
「ごめんね、今日はちょっと外せない用事があって。また明日、絶対ね」
女子たちの誘いを優しい王子様スマイルで丁重にお断りし、私は逃げるように教室を飛び出した。
「ふぅ……。これでやっと一安心……」
足早に廊下を歩き、1階の昇降口へと向かう。
しかし、階段を降りた先の人気のない渡り廊下で、背後から、聞き覚えのある低い声が私を呼び止めた。
「おい、小鳥遊ツムギ」
「……え?」
振り返ると、そこにはカバンを片手に持った、隣の席の一ノ瀬くんが立っていた。
夕日に照らされた彼の影が、私に向かって長く伸びている。
「な、何かな? 一ノ瀬くん。まだ僕に何か用?」
私は慌てて、いつもの低めの『王子様ボイス』を作って微笑みかけた。
けれど、一ノ瀬くんは一切表情を変えないまま、ゆっくりと、私との距離を詰めてくる。
一歩、また一歩。壁際に追い詰められ、私の背中が冷たい壁に当たった。
一ノ瀬くんは、私のすぐ目の前で足を止めると、逃げ道を塞ぐように、私の耳元の壁にドン、と手を突いた。
いわゆる――『壁ドン』の状態だ。
「え、一ノ瀬くん……っ!?」
あまりの至近距離に、私の心臓が爆発しそうなほど跳ね上がる。

