『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

神楽坂先輩に図書室で正体を見破られた、その日の放課後。

私は世界史のプリントを抱えたまま、生きた心地がしない状態で、校舎の最上階にある重厚な扉――『生徒会室』の前に立っていた。

(どうしよう……一ノ瀬くんの『パシリ』だけでも心臓がもたないのに、今日から生徒会副会長の『専属秘書』だなんて……)

ノックをする手が、恐怖と緊張でガタガタと震える。

コンコン、と小さく音を立てると、中から「どうぞ」という、あの低くて洗練された艶のある声が響いた。

「し、失礼します……」

扉を開けると、そこは高級ホテルのラウンジのように静かで、革張りのソファや大きなデスクが並ぶ大人っぽい空間だった。

デスクの向こうでは、細縁の眼鏡をかけた神楽坂先輩が、優雅に紅茶を飲みながら書類に目を落としている。

「待っていたよ、ツムギくん。……いや、小鳥遊さん、かな?」

神楽坂先輩は眼鏡の位置をクイッと直すと、獲物を見つけた肉食獣のような妖しい笑みを浮かべて立ち上がった。

「あ、あの……学校では『ツムギ』でお願いします、神楽坂先輩。……それで、秘書のお仕事というのは、一体何をすれば……?」

私は声を低く落とし、優しい王子様としてのポーカーフェイスを必死に保とうとした。けれど、先輩は私のすぐ目の前まで歩いてくると、私のノートを持つ手元をじっと見つめて、クスリと笑った。

「そんなに警戒しなくていい。まずは私の代わりに、この大量の書類の整理と、タイピングをしてもらうよ。……私のすぐ隣の席でね」

神楽坂先輩は、自分のデスクのすぐ真横にある小さな椅子を指差した。

その距離、わずか数十センチ。女子モテを狙ったはずの私の男装生活は、2人目のイケメンによる超至近距離の監視下で、新たな波乱の幕を開けることになってしまった。