『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

体育館中に響き渡る地鳴りのような大歓声と拍手の嵐。ステージに駆け上がってきたクラスの男子たちに揉みくちゃにされながら、一ノ瀬くんは私だけを真っ直ぐに見つめて、小さく親指を立てていた。

胸がドクンと、熱く跳ね上がる。一ノ瀬くんと心が通じ合って、秘密の恋人同士になれた。あの意地悪なライバルの女の子とのピンチも、一ノ瀬くんや先輩たちのおかげで、全校生徒にバラされる前に防ぐことができた。

……でも、本当にこれでいいのかな。

沸き返る客席の女の子たちの、純粋な笑顔と「ツムギ様ー!」という熱い歓声を浴びながら、私の胸の奥に、引き裂かれるような鋭い痛みが走った。

あのライバルの女の子は、私を破滅させるために写真を流そうとしていた。それは間違ったことだけど、彼女がDMで私にぶつけてきた言葉は、私の胸にずっと消えない棘として刺さったままだ。

『私が一番気に入らないのは、あんたが男のフリをして女子全員を騙してハーレム状態作ってること』

みんなが「カッコいい」って熱狂してくれている私は、いつバレるか怯えながら、必死に作り上げている『男装のツムギ』というただの幻だ。こんな風にみんなを騙したまま、チヤホヤされるハーレム状態に甘えて、裏では一ノ瀬くんと恋人同士になって自分だけ幸せになるなんて――それは、やっぱりずるい。

誰かに強制的に暴かれて、最悪の形で崩壊を迎えるくらいなら。 

いつも全力で私を応援してくれて、今日もこうしてクイズ大会で私を勝たせてくれた大好きなみんなに、私は自分の口から、本当のことを伝えるべきなんじゃないだろうか。

「さあ! 見事、全校芸術文化コンクールのクイズ大会を制しました、3年B組チーム! 代表してツムギくん、全校生徒の皆さんに優勝のコメントをお願いします!」

司会の生徒から、キランと光るマイクを向けられる。

客席の女子生徒たちが、ステージの上の私をキラキラとした憧れの瞳で見つめている。

私はマイクを握る指先に、ぎゅっと力を込めた。

心臓が、壊れそうなほど激しく脈打っている。ウィッグの下の額から、冷たい汗がひとすじ流れた。隣にいる一ノ瀬くんが、私のただならぬ雰囲気に気がついたように、ハッとして息を呑むのが分かった。

一ノ瀬くん、ごめんね。私……覚悟を決めたよ。


私は深く、深く息を吸い込んで、マイクを唇へと近づけた。