『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

「……チッ、マジであのクソ副会長、次ちょっかい出して来たら絶対にぶっ飛ばす」

先輩たちが去った後、誰もいない渡り廊下の陰に移動した瞬間、一ノ瀬くんは猛烈に不機嫌な顔をして頭をガシガシとかきむしった。耳の端まで怒りと照れくささで真っ赤になっている。 

「ふふ、一ノ瀬くん、すっごく怒ってくれたね。ありがとう」

「笑うな。……俺がどんだけハラハラしたと思ってんだよ。お前が他の男に触られてんの、一秒でも見てらんねぇんだわ」

一ノ瀬くんは周囲に生徒が残っていないのを素早く確認すると、私の細い肩をガシッと力強く引き寄せ、そのまま壁際に私を優しく追い詰めるようにして顔を近づけてきた。

男装のジャケット越しだけど、彼の大きな手のひらの熱さが、私の体にじんわりと伝わってくる。

「一ノ瀬、くん……っ、顔、近いよ……っ」

「いいだろ、誰も見てねぇよ。……学校じゃ手も繋げねぇし、他の奴らにツムギ様ツムギ様って囲まれてよ……。俺がどんだけ我慢してっか、お前ちょっとは分かれよ、紬

彼の口から零れた『紬』という本名。

学校のみんなが知らない、本当の私を呼ぶ彼の低い声が、私の耳元を甘くくすぐる。一ノ瀬くんの大きな瞳が、狂おしいほどの愛おしさと独占欲を孕んで私を真っ直ぐに見つめていた。

「私だって……一ノ瀬くんとずっと一緒にいたいよ。……だから、そんなに怒らないで?」

私が彼の胸元にそっと手を添えて上目遣いで見上げると、一ノ瀬くんはハッとしたように息を呑み、さらに耳を赤くしてフイッと顔を背けた。


「……反則。お前、その顔学校で絶対にするなよ。他の男子が見たらタダじゃおかねぇからな」

乱暴に私の男装のウィッグの頭をぽんと大きく優しい手で包み込みながら、一ノ瀬くんは不器用に微笑んだ。

学校での秘密の恋人同士。男友達のフリをしつつも、この隠れ家のような日陰で繰り広げられる二人のイチャイチャな時間が、私の心臓をこれ以上ないくらい甘く、激しく震わせていたんだ。