『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

図書室での事件を経て、私と一ノ瀬くんの距離は、さらに縮まったような気がしていた。

パシリと主人、という最悪の関係から始まったはずなのに、今の彼は、私の男装を学校で唯一支えてくれる、大切な相棒のようだった。

「はい、一ノ瀬くん。これが頼まれてた世界史の参考書」

放課後の誰もいない教室で、私は彼に本を手渡した。

「サンキュ。……小鳥遊、お前さ、なんでそんなに女子にモテたかったわけ?」

一ノ瀬くんは参考書を受け取りながら、ふと思い出したように尋ねてきた。

「え? それは……地味だった中学時代のリベンジっていうか。女の子たちから『キャーキャー』言われる、カーストの頂点に立ってみたかったの!」

私が拳を握って熱弁すると、一ノ瀬くんはハハッと楽しそうに大爆笑した。

「不純すぎるだろ、動機が。……でも、まぁ、お前がその不純な理由で男装してくれたおかげで、退屈だった俺の高校生活が、ちょっとは面白くなったかもな」

「え……?」

一ノ瀬くんは窓の外の夕焼けを見つめながら、少しだけ優しい目をしていた。

「学校にバレるまでは、お前のその『ファンミごっこ』、俺が一番近くで見届けてやるよ。だから、誰にも正体明かすなよ? 小鳥遊」

「うん……! ありがとう、一ノ瀬くん!」

私は嬉しくなって、満面の笑みを彼に向けた。

一ノ瀬くんは一瞬、眩しいものを見るように目を見開いたあと、慌てて顔を背けて「……だから、その顔は男の姿でやるなっての」と、耳まで真っ赤にして呟いた。

冷徹男子と男装女子。誰にも言えない秘密を共有した二人の、不思議な同盟が、ここにしっかりと結ばれたのだった。