「――そこまでにして、一ノ瀬くん」
機材室の重い遮光カーテンを押し開けて、私は中に飛び込んでいた。
案内係としての持ち場を離れるのは、完璧なイケメン『ツムギ』としては失格かもしれない。だけど、一ノ瀬くんが一人で私のために泥をかぶって戦ってくれているのに、私だけが安全な場所でスポットライトを浴びているなんて、どうしても耐えられなかった。
「…ツムギ!? なんでここにいんだよ、表の案内はどうした」
一ノ瀬くんが驚いたように目を丸くし、掴んでいた彼女の手首から少しだけ力を抜いた。
「もう第一部の上映が始まったから、外は落ち着いたよ。……それより、どうしても私自身の口から、彼女に言わなきゃいけないことがあるの」
私はいつものキザな王子様スマイルを完全に消し去り、一人の女の子『紬』としての真っ直ぐな瞳で、床にへたり込んでガタガタと震えている彼女を見つめた。
彼女は涙目で私を見上げ、一ノ瀬くんへの恐怖と、私の登場への戸惑いで、唇を小刻みに震わせている。
「……ねぇ。あなたが私の男装を気に入らないのは、よく分かったよ。女子全員を騙して、ハーレム状態作ってずるいって、DMで言ってたもんね」
私は彼女の前にゆっくりとしゃがみ込み、視線を同じ高さに合わせた。
「でもね、私は誰かを騙して男装を始めたわけじゃないの。毎日いつバレるか怖くて、ハラハラして、生きた心地がしなくて……。あなたが思うほど、私は完璧でも何でもない、ただの弱虫な女の子なんだよ」
「つ、紬……」
床に爪を立てながら、彼女が蚊の鳴くような声で私の名前を呼んだ。
「学校のみんなが好きなのは、私が必死に作った『ツムギ様』っていう幻。誰も、本当の私なんて見てないの。……でもね、あの一ノ瀬くんだけは、私がただの女の子だって知った上で、隣にいてくれたの。学校中の誰に囲まれるより、私は一ノ瀬くんにたった一言『頑張ったな』って言ってもらえる方が、何百倍も嬉しいんだよ」
私の口から次々と飛び出す本心に、彼女はハッとしたように目を見開いた。
「だから……一ノ瀬くんとの恋を、ずるいなんて言わないで。私は、大好きな人と一緒にいたいだけっ!」
私の目から、堪えていた涙がポロポロと溢れ落ちて、床を濡らす。一ノ瀬くんが後ろから優しく私の肩を抱き寄せ、大きな手で支えてくれた。
私の必死な訴えと、二人の強固な絆を目の当たりにした彼女は、ついに完全に戦意を喪失したように、深く頭を垂れて声を上げて泣き崩れたのだった――。
機材室の重い遮光カーテンを押し開けて、私は中に飛び込んでいた。
案内係としての持ち場を離れるのは、完璧なイケメン『ツムギ』としては失格かもしれない。だけど、一ノ瀬くんが一人で私のために泥をかぶって戦ってくれているのに、私だけが安全な場所でスポットライトを浴びているなんて、どうしても耐えられなかった。
「…ツムギ!? なんでここにいんだよ、表の案内はどうした」
一ノ瀬くんが驚いたように目を丸くし、掴んでいた彼女の手首から少しだけ力を抜いた。
「もう第一部の上映が始まったから、外は落ち着いたよ。……それより、どうしても私自身の口から、彼女に言わなきゃいけないことがあるの」
私はいつものキザな王子様スマイルを完全に消し去り、一人の女の子『紬』としての真っ直ぐな瞳で、床にへたり込んでガタガタと震えている彼女を見つめた。
彼女は涙目で私を見上げ、一ノ瀬くんへの恐怖と、私の登場への戸惑いで、唇を小刻みに震わせている。
「……ねぇ。あなたが私の男装を気に入らないのは、よく分かったよ。女子全員を騙して、ハーレム状態作ってずるいって、DMで言ってたもんね」
私は彼女の前にゆっくりとしゃがみ込み、視線を同じ高さに合わせた。
「でもね、私は誰かを騙して男装を始めたわけじゃないの。毎日いつバレるか怖くて、ハラハラして、生きた心地がしなくて……。あなたが思うほど、私は完璧でも何でもない、ただの弱虫な女の子なんだよ」
「つ、紬……」
床に爪を立てながら、彼女が蚊の鳴くような声で私の名前を呼んだ。
「学校のみんなが好きなのは、私が必死に作った『ツムギ様』っていう幻。誰も、本当の私なんて見てないの。……でもね、あの一ノ瀬くんだけは、私がただの女の子だって知った上で、隣にいてくれたの。学校中の誰に囲まれるより、私は一ノ瀬くんにたった一言『頑張ったな』って言ってもらえる方が、何百倍も嬉しいんだよ」
私の口から次々と飛び出す本心に、彼女はハッとしたように目を見開いた。
「だから……一ノ瀬くんとの恋を、ずるいなんて言わないで。私は、大好きな人と一緒にいたいだけっ!」
私の目から、堪えていた涙がポロポロと溢れ落ちて、床を濡らす。一ノ瀬くんが後ろから優しく私の肩を抱き寄せ、大きな手で支えてくれた。
私の必死な訴えと、二人の強固な絆を目の当たりにした彼女は、ついに完全に戦意を喪失したように、深く頭を垂れて声を上げて泣き崩れたのだった――。


