『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

「――えっ!? い、一ノ瀬、くん……っ!?」

眩しい蛍光灯の光の下で、手首をガシッと力任せに掴まれた彼女は、幽霊でも見たかのように顔を真っ青に引きつらせて絶叫した。

まさか、誰もいないはずの暗い機材室に、生徒会でも映音部でもない一ノ瀬くんが待ち構えているなんて、夢にも思っていなかったのだろう。

「よぉ。待ちくたびれたぜ、クソ女」

一ノ瀬くんの声は、怒鳴るようなものではなかった。

だけど、低く、冷酷で、聞いた瞬間に全身の血が凍りつくような圧倒的な凄みを孕んでいた。ポケットに片手を突っ込んだまま、彼は獣のような鋭い瞳で、手首を掴まれて震えている彼女を上から冷たく見下ろした。


「な、何よ……! 離しなさいよ! なんであんたがここにいるのよ!?」

「あぁん? なんでって、お前がツムギを脅して、この時間にここにネズミみたいに忍び込んでくるって分かってたからだよ。……おい、その手に握りしめてる薄汚ぇUSB、今すぐ俺に渡してもらおうか」

「嫌よ……っ! 離してってば!!」

彼女は必死に掴まれた手首を振り払おうと暴れるけれど、一ノ瀬くんの鋼のような筋力の前では、その抵抗は虚しく空を掻くだけだった。

一ノ瀬くんはフンと鼻で笑うと、彼女の指先を一本ずつ強引にこじ開け、握られていた小さなUSBメモリを無造作に奪い取った。

「――っ、返しなさいよ! それが無いと、私の計画が……っ!」

「計画だぁ? 誰の正体を全校生徒の前でバラすって? ……ナメんのも大概にしろよ、テメェ」

一ノ瀬くんは奪い取ったUSBを自分のポケットに放り込むと、さらに彼女との距離を詰め、逃げ場をなくすようにして壁際に彼女を追い詰めた。彼の額に浮かんだ青筋と、恋人である紬をこれ以上傷つけさせないという激しい独占欲が、機材室の空気を激しく支配していく。

「お前さ、ツムギが一人でビクビク怯えて、DMで泣きついてきたからって、調子に乗って調子こいてんじゃねぇぞ。……あいつの後ろにはなぁ、最初から俺がついてんだわ」

一ノ瀬くんは彼女のスマートフォンをもぎ取るようにして奪い、画面に残ったDMの履歴を一瞥した。

「生徒会が動けない方法で準備したとか抜かしてたが……残念だったな。お前が使おうとしてたその機材の管理権限、生徒会副会長の神楽坂から、全部俺に委任されてんだよ。この腕章が見えねぇのか?」

一ノ瀬くんが腕に巻いた『機材管理補佐』の腕章を突きつけると、彼女はついに言い逃れができないことを悟ったのか、ガタガタと膝を震わせ、その場にへたり込むようにして座り込んでしまった。

圧倒的な形勢逆転。

一ノ瀬くんの恋人を守るための冷徹なまでの猛攻によって、彼女の最悪の暴露計画は、全校生徒に届く前に、この暗いステージ裏で完璧に叩き潰されたのだった――。