『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

「触らないでください」

私は、伸びてきた先輩の手を、自分の手でガシッと掴んで止めた。

毎日のメンズメイクの練習や、立ち振る舞いの研究の中で、私は「弱々しい態度を見せない」ことも徹底的に叩き込んできたのだ。

ここで怯えたら、私の男装生活が終わるだけじゃない。私を信じて応援してくれているB組の女子たちの気持ちまで、踏みにじることになる。

「……先輩。僕に何か個人的な恨みがあるなら、放課後、グラウンドの裏でいくらでもお相手します。ですが、今は図書室です。他の生徒の迷惑になりますので、手を引いていただけますか?」

私は一ノ瀬くんや女子たちの前で見せるものとは違う、芯の通った、冷徹で低い『男のトーン』で先輩をまっすぐに見つめ返した。

私の強い眼光に押されたのか、先輩は一瞬、ギクリとしたように目を見開いた。

「ち、チッ……! 綺麗な顔して、生意気な口叩きやがって……!」

先輩は悔しそうに私の手を振り払うと、

「次、外で見かけたら覚えてろよ!」と言い捨てて、足早に図書室を出て行ってしまった。

「……ふぅ。危なかった……」

先輩の姿が見えなくなった瞬間、私はその場にへたり込みそうになるのを必死でこらえた。

掴んでいた自分の手が、恐怖でガタガタと震えている。

「あーあ。何かっこつけてんだよ、お前」

本棚の陰から、呆れたような、でもどこかホッとしたような声が聞こえた。振り返ると、そこには世界史の本を片手を持った一ノ瀬くんが立っていた。

「一ノ瀬、くん……。いつからそこに?」

「お前が手を掴んだところから。……あいつに触られそうになった時、普通に俺を呼べば良かっただろ。パシリの分際で、勝手にピンチになってんじゃねぇよ」

一ノ瀬くんは大股でこちらへ歩いてくると、私の前にしゃがみ込み、私の震える手を自分の大きな手で包み込んだ。

「よく頑張った」とでも言うように、不器用だけど、驚くほど温かい体温が伝わってくる。

「……ありがと、一ノ瀬くん」

「……お前が女の子だってこと、あんな奴にバラされてたまるかっての」

一ノ瀬くんは少し顔を赤くしながら、私の手を引いて強引に立ち上がらせた。彼のその言葉が、私の胸を激しく焦がしていく。