『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

「……なるほど。あいつ、そんなところまで計算して動いていたのか」

一ノ瀬くんから『映音部の機材スペースに直前にデータを仕込む気だ』という大まかな作戦の背景を聞いた律先輩は、深く椅子に背をもたれかけさせた。

私が男ではなく『女の子』だと知っている律先輩。

彼は私の本当の性別を握っているけれど、学校の秩序を乱すような泥泥としたスキャンダルが全校生徒に広まることは、生徒会長としても本意ではないはずだ。私は一歩前に出て、律先輩の真っ直ぐな瞳を見つめ返した。

「律先輩、お願いします。コンクール当日、一ノ瀬くんがステージ裏の機材スペースに入れるように、生徒会長の権限で臨時の『立ち入り許可証』を発行してもらえませんか……?」

私が頭を下げて必死にお願いすると、律先輩はしばらく無言のまま私を見つめていた。

その沈黙が、放課後の生徒会室の中に重苦しく張り詰める。やがて、律先輩はフッと低く、どこか楽しそうな笑みを漏らした。

「面白いね、紬。一ノ瀬くんに全てを打ち明けて、二人で僕のところに頭を下げに来るなんて。君が僕に作った『秘密の借り』、ますます大きくなっているよ?」

「それは……っ」

「おい、クソ眼鏡。ツムギをこれ以上揺さぶるんじゃねぇ。許可証を出せるのか出せねぇのか、それだけ答えろよ」

一ノ瀬くんが低く、獣のような殺気を孕んだ声で律先輩の言葉を遮る。私を守ろうとする一ノ瀬くんの激しい独占欲。だけど律先輩は、その殺気を前にしても眉一つ動かさず、デスクの引き出しからスマートに書類を取り出した。

「いいだろう。学校の秩序を守るためだ。一ノ瀬くん、君の分のステージ裏立ち入り許可証を手配してあげよう。……ただし、これだけではまだ完璧じゃない。映音部を実質的に動かしているのは、僕ではなく副会長だからね。次は神楽坂のところへ行きなさい」

律先輩のその言葉に、私と一ノ瀬くんはハッと顔を見合わせた――。