『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

電話が切れてから、私は玄関の冷たいフローリングに座り込んだまま、ただ時計の針を見つめていた。

十五分、二十分……。静まり返った夜の家の中で、秒針の刻む音がやけに大きく耳に響く。

本当に来ちゃうんだ……。一ノ瀬くん、足、まだ痛むはずなのに……

申し訳なさと、だけどそれ以上に、彼が本当に来てくれるという事実への甘い安堵感が、私の凍りついた胸をじんわりと溶かしていく。
ドンドン、と静かな夜の空気を破って、玄関のドアが小さく叩かれた。


「――紬、俺だ。開けろ」

少し息の上がった、だけど間違いなく世界で一番安心する彼の声。

私は弾かれたように立ち上がり、鍵を開けて重いドアを引いた。


「一ノ瀬くん……っ!」

外灯の光の下に立っていた一ノ瀬くんは、体操着の上に黒いパーカーを羽織っただけの姿で、額にはうっすらと汗を浮かべていた。

スポーツ祭で痛めた右足に無理をさせたのだろう、肩が少しだけ不自然に揺れている。

「お前……、酷ぇ顔してんな」 

私の泣き腫らした顔を見るなり、一ノ瀬くんは痛ましそうに眉をひそめ、靴を脱いでドカドカと家の中へと上がってきた。リビングのソファに腰を下ろすと、彼は大きく息を吐き出しながら、自分の右足首を無造作にさする。


「ごめんね、無理させちゃって……。すぐに冷やすもの持ってくるから!」

「いいから座れ。怪我なんかより、さっきのDMの話だ。……あのクソ女、次の行事で全部ぶちまけるって言ったんだな?」

私が隣に座ると、一ノ瀬くんは私の細い肩をガシッと掴み、覗き込むようにしてその鋭い瞳を私に向けた。

いつものぶっきらぼうな彼じゃない。本気で私を守るために、牙を剥き出しにした猛獣のような凄みが、その瞳の奥でフツフツと燃え盛っていた。