トゥルルル、トゥルルル……と、静まり返った夜の空気の中に、無機質な発信音が響き渡る。
心臓が口から飛び出しそうなほど激しく脈打っていた。もし出なかったらどうしよう、そんな不安がよぎった、まさに3回目の音が鳴った瞬間だった。
ピッ、と接続音がして、スピーカーの向こうから、少し息を切らせたような、だけど間違いなく世界で一番大好きな彼の声が聞こえてきた。
『――おい、ツムギか? どうした、こんな時間に……』
一ノ瀬くんの声を聞いた瞬間、堪えていた涙が、堰を切ったように目元から溢れ出してしまった。
「……っ、一ノ瀬くん……っ、う、……」
『紬…!? お前、泣いてんのか? 何があった?』
受話器の向こうで、一ノ瀬くんがガタッと激しく椅子を蹴立てるような音が響く。いつものぶっきらぼうなトーンは一瞬で消え去り、彼の声は聞いたこともないほどの焦りと、張り詰めた心配で震えていた。
「ごめんね……っ、一ノ瀬くん、約束破って、一人でなんとかしようとしちゃったの……っ。あのね、さっき、自販機の裏の写真が送られてきて……っ」
私はしゃくりあげながらも、さっきライバル女子から届いた恐ろしい写真のこと、そしてDMで学校を辞める交渉すら拒絶され、次の行事で全校生徒の前で全てを暴露すると脅されたことを、震える声でありのまま全て打ち明けた。
私の涙ながらの告白を、一ノ瀬くんは途中で遮ることなく、静かに、だけど受話器の向こうでゴクリと息を呑みながら最後まで聞いてくれた。
全てを話し終え、「ごめんなさい……」と小さく呟いた私に、一ノ瀬くんは、地響きがしそうなほど低く、だけどこれ以上ないくらい力強い声でこう言った。
『……お前が謝ることじゃねぇよ、紬。一人でそこまで怖い思いさせて、気づけなかった俺が悪い』
彼の声からは、あのライバル女子への、ドス黒いほどの激しい怒りがフツフツと伝わってきた。だけど、私に向ける言葉だけは、驚くほど優しかった。
『次の行事で全部バラす、だぁ? させるかよ、そんなこと。……おい、紬。今すぐそこ動くんじゃねぇぞ。俺が今から、テメェの家まで直接行ってやるからな』
「え……!? でも、一ノ瀬くん、足の怪我が――」
『そんなもん関係ねぇよ! 彼氏が、泣いてる彼女のところにすっ飛んでいくのは当たり前だろ! ……すぐ行くから、鍵閉めて待ってろ』
ブツッ、と男らしく一方的に電話が切られた。
スマホを耳から離した私の胸には、さっきまでの絶望的な冷たさはもうなかった。一ノ瀬くんが、怪我をした足を引きずってでも、今すぐ私のために走ってきてくれる、付き合いたての秘密の恋人。
それに、少しだけ胸が温かくなった。
心臓が口から飛び出しそうなほど激しく脈打っていた。もし出なかったらどうしよう、そんな不安がよぎった、まさに3回目の音が鳴った瞬間だった。
ピッ、と接続音がして、スピーカーの向こうから、少し息を切らせたような、だけど間違いなく世界で一番大好きな彼の声が聞こえてきた。
『――おい、ツムギか? どうした、こんな時間に……』
一ノ瀬くんの声を聞いた瞬間、堪えていた涙が、堰を切ったように目元から溢れ出してしまった。
「……っ、一ノ瀬くん……っ、う、……」
『紬…!? お前、泣いてんのか? 何があった?』
受話器の向こうで、一ノ瀬くんがガタッと激しく椅子を蹴立てるような音が響く。いつものぶっきらぼうなトーンは一瞬で消え去り、彼の声は聞いたこともないほどの焦りと、張り詰めた心配で震えていた。
「ごめんね……っ、一ノ瀬くん、約束破って、一人でなんとかしようとしちゃったの……っ。あのね、さっき、自販機の裏の写真が送られてきて……っ」
私はしゃくりあげながらも、さっきライバル女子から届いた恐ろしい写真のこと、そしてDMで学校を辞める交渉すら拒絶され、次の行事で全校生徒の前で全てを暴露すると脅されたことを、震える声でありのまま全て打ち明けた。
私の涙ながらの告白を、一ノ瀬くんは途中で遮ることなく、静かに、だけど受話器の向こうでゴクリと息を呑みながら最後まで聞いてくれた。
全てを話し終え、「ごめんなさい……」と小さく呟いた私に、一ノ瀬くんは、地響きがしそうなほど低く、だけどこれ以上ないくらい力強い声でこう言った。
『……お前が謝ることじゃねぇよ、紬。一人でそこまで怖い思いさせて、気づけなかった俺が悪い』
彼の声からは、あのライバル女子への、ドス黒いほどの激しい怒りがフツフツと伝わってきた。だけど、私に向ける言葉だけは、驚くほど優しかった。
『次の行事で全部バラす、だぁ? させるかよ、そんなこと。……おい、紬。今すぐそこ動くんじゃねぇぞ。俺が今から、テメェの家まで直接行ってやるからな』
「え……!? でも、一ノ瀬くん、足の怪我が――」
『そんなもん関係ねぇよ! 彼氏が、泣いてる彼女のところにすっ飛んでいくのは当たり前だろ! ……すぐ行くから、鍵閉めて待ってろ』
ブツッ、と男らしく一方的に電話が切られた。
スマホを耳から離した私の胸には、さっきまでの絶望的な冷たさはもうなかった。一ノ瀬くんが、怪我をした足を引きずってでも、今すぐ私のために走ってきてくれる、付き合いたての秘密の恋人。
それに、少しだけ胸が温かくなった。


