『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

暗闇に包まれた自宅の玄関前で、私はスマートフォンの青白い光に照らされながら、ただ震えていた。

交渉は、完全に決裂だった。


『待って、お願い。せめて次の行事までなんて言わずに、今すぐ私と直接会って話をして。あなたの言う通りにするから、一ノ瀬くんやみんなの前でバラすのだけは待って……っ!』

プライドなんて全部捨てて、私は必死にDMを送り続けた。もし彼女が金銭や、あるいは何か別の無理難題を要求してくるなら、私はどんな条件にだって従うつもりだった。

それくらい、私にとって今の『学園生活』と『一ノ瀬くんとの恋』は、命に代えても守りたい大切なものになっていたから。

しかし、画面に表示された彼女の次の言葉は、私の最後の淡い希望を、無残に打ち砕いた。


『直接会う? 嫌だよ、面倒くさい。それにさ、あんた生徒会長の律先輩にも泣きついて、私に圧力かけようとしたでしょ?』


「――っ!?」

頭を鈍器で殴られたような衝撃が走り、私は思わず息を呑んだ。

律先輩が裏から手を回してくれたことが、逆に彼女の悪意に火をつけてしまっていたのだ。


『生徒会長が動いた時はちょっと焦ったけど、でも無駄だよ。私、生徒会が手を出せない方法で、次の行事の準備を進めてるから。会長にチクった罰として、バラす時の演出をもう少し派手にしてあげるね』


画面の向こうで、彼女が勝ち誇ったようにニヤリと笑う顔が脳裏に浮かび、全身の血がスーッと引いていくのが分かった。

律先輩の権力すら、この狂気じみた計画を止めることはできなかった。むしろ、私が裏で動いたことで、彼女のターゲットは私と一ノ瀬くんだけでなく、さらに確実に、破滅へと向かうカウントダウンを加速させてしまったのだ。

『じゃあね、ツムギくん。行事の当日、全校生徒の前で最高のステージを用意して待ってるから。それまで、せいぜい震えて過ごしなよ』


そのメッセージを最後に、いくらこちらから文章を送っても、二度と『既読』がつくことはなかった。

完全に泳がされている。私は彼女の張り巡らせた蜘蛛の巣の中で、ただ暴れることしかできない哀れな獲物だったのだ。