『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

だけど――その穏やかで甘い「静けさ」が深まれば深まるほど、私の本能のどこかが、冷たい警報を鳴らし続けていた。

本当に、あの意地悪なライバルの女の子は諦めたのだろうか。

彼女が握っている、私と一ノ瀬くんのあの決定的なハグの写真。それが消えない限り、私の『完璧な学園生活』の足元には、いつでも爆薬が敷き詰められているようなものなのだ。


「……じゃあ、また明日な」

いつの間にかすっかり日が落ちて、薄暗くなった私の家の前。一ノ瀬くんは名残惜しそうに、だけどぶっきらぼうにそう言った。


「うん、また明日ね、一ノ瀬くん。今日も一緒に帰ってくれてありがとね」

私が小さく手を振ると、彼はポケットに手を突っ込んだまま「おう」と短く応え、大きな背中を向けて歩き去っていく。

その後ろ姿が見えなくなるまで、私はずっとその場に立ち尽くして見送っていた。

今日も何事もなく、無事に一日が終わった。一ノ瀬くんと恋人同士になれて、学校生活は今まで以上に幸せで満たされている。


「ふぅ……」

小さく息を吐き出し、私は玄関のドアノブに手をかけた。

カチャリ、と静かな音が夜の空気に響く。


――しかし、その瞬間だった。

私のブレザーのポケットの中で、スマートフォンが『ブブブッ』と激しく震え、短い受信音を鳴らした。

心臓が、冷たい手でぎゅっと掴まれたように冷たく跳ね上がる。

嫌な予感がして、震える手で画面を開いた私の目は、次の瞬間、恐怖のあまり限界まで見開かれた。

通知の画面に表示されていたのは、差出人のない、一枚の画像データ。

そこには、たった数十分前、学校の自動販売機の裏で、一ノ瀬くんに頭を優しく撫でられて、女の子の顔で微笑んでいる『私の姿』が、暗闇の中から恐ろしいほど鮮明に写し出されていたのだ。

画面の下には、たった一行、血が凍りつくような冷酷なメッセージが添えられていた。


『生徒会長に守ってもらって安心した? 残念だけど、カウントダウンは止まってないよ。スポーツ祭の次の行事で、みんなにこの素敵な写真をプレゼントしてあげるね』


「――え、……っ」

スマートフォンが地面に落ちて軽い音を立てた。

律先輩の牽制すら嘲笑うように、あの影は、さらに深く、より確実に私たちのすぐ真後ろまで迫っていたのだ。

手に入れたはずの静けさは、一瞬にして粉々に砕け散った。