カチャリ、と重い生徒会室のドアを閉めた瞬間、駆け出した。
律先輩に少しだけ裏から目を光らせてもらえることになった安心感と、その代わりにまた新しい『借り』を作ってしまったことへの、言葉にできないハラハラ感。
ううん、と一度頭を振ってスピードを上げる。
早く戻らなきゃ……! 一ノ瀬くん、心配して待っててくれてるもん。
放課後の渡り廊下を抜け、昇降口の近くまでたどり着いた時、夕暮れのオレンジ色の光の中に、一つの大きな背中が見えた。
一ノ瀬くんだ。
彼はカバンを片方の肩にひっかけ、壁に背を預けて腕を組んでいた。
怪我をした右足を少しだけ気にしながらも、視線は真っ直ぐに私がやってくる方向へと向けられている。
「……あ、一ノ瀬くん! 待たせてごめんね!」
息を切らせて駆け寄る私に気がつくと、一ノ瀬くんの格好いい眉が一瞬でグッと中央に寄った。あからさまに不機嫌そうな、だけどホッとしたような、愛おしい瞳が私を捉える。
「……遅ぇよ、ツムギ。あのクソ眼鏡、お前に変なことしなかっただろうな」
私が一歩近づくと、一ノ瀬くんは周りに生徒が残っていないのを確認してから、私の肩をガシッと力強く引き寄せた。
彼の大きな手のひらの熱さが制服越しに伝わってきて、さっきとは全く違う意味で私の心臓が爆発しそうになる。
「ううん、大丈夫だよ! 行事のことで、ちょっとだけお仕事のお願いをしてただけだから」
律先輩に、あのライバルの女の子のことを裏から少しだけ探ってもらうことにした――なんて、一ノ瀬くんには言えなかった。
一ノ瀬くんは昨日「俺が絶対に守ってやる」って言ってくれたばかりなのに、別の男である律先輩に頼ったなんて知られたら、絶対にまた不器用な嫉妬で怒らせてしまう。
「本当か? お前、あいつの前だと妙にオドオドするから、見ててハラハラすんだよ。……何があっても、俺が一番にお前を守るって言っただろ。俺を頼れよ、もっと」
一ノ瀬くんは少し照れくさそうに顔をフイッと背けながらも、私の頭をぽんと大きく優しい手で包み込んだ。
「……うん、ありがとう、一ノ瀬くん」
付き合いたての恋人としての、胸が苦しくなるほどの甘い優しさ。
だけど、律先輩に作った『秘密の借り』を隠したまま、私は引きつりそうな王子様スマイルを浮かべることしかできなかった。
律先輩に少しだけ裏から目を光らせてもらえることになった安心感と、その代わりにまた新しい『借り』を作ってしまったことへの、言葉にできないハラハラ感。
ううん、と一度頭を振ってスピードを上げる。
早く戻らなきゃ……! 一ノ瀬くん、心配して待っててくれてるもん。
放課後の渡り廊下を抜け、昇降口の近くまでたどり着いた時、夕暮れのオレンジ色の光の中に、一つの大きな背中が見えた。
一ノ瀬くんだ。
彼はカバンを片方の肩にひっかけ、壁に背を預けて腕を組んでいた。
怪我をした右足を少しだけ気にしながらも、視線は真っ直ぐに私がやってくる方向へと向けられている。
「……あ、一ノ瀬くん! 待たせてごめんね!」
息を切らせて駆け寄る私に気がつくと、一ノ瀬くんの格好いい眉が一瞬でグッと中央に寄った。あからさまに不機嫌そうな、だけどホッとしたような、愛おしい瞳が私を捉える。
「……遅ぇよ、ツムギ。あのクソ眼鏡、お前に変なことしなかっただろうな」
私が一歩近づくと、一ノ瀬くんは周りに生徒が残っていないのを確認してから、私の肩をガシッと力強く引き寄せた。
彼の大きな手のひらの熱さが制服越しに伝わってきて、さっきとは全く違う意味で私の心臓が爆発しそうになる。
「ううん、大丈夫だよ! 行事のことで、ちょっとだけお仕事のお願いをしてただけだから」
律先輩に、あのライバルの女の子のことを裏から少しだけ探ってもらうことにした――なんて、一ノ瀬くんには言えなかった。
一ノ瀬くんは昨日「俺が絶対に守ってやる」って言ってくれたばかりなのに、別の男である律先輩に頼ったなんて知られたら、絶対にまた不器用な嫉妬で怒らせてしまう。
「本当か? お前、あいつの前だと妙にオドオドするから、見ててハラハラすんだよ。……何があっても、俺が一番にお前を守るって言っただろ。俺を頼れよ、もっと」
一ノ瀬くんは少し照れくさそうに顔をフイッと背けながらも、私の頭をぽんと大きく優しい手で包み込んだ。
「……うん、ありがとう、一ノ瀬くん」
付き合いたての恋人としての、胸が苦しくなるほどの甘い優しさ。
だけど、律先輩に作った『秘密の借り』を隠したまま、私は引きつりそうな王子様スマイルを浮かべることしかできなかった。


