だけど、律先輩はそれ以上私を追い詰めることはせず、フッと小さく息を吐き出すと、いつもの冷静な生徒会長の顔に戻って眼鏡の奥の瞳を細めた。
「……まぁいい。俺がわざわざここまであんたを呼び止めたのは、そんな子供の痴話喧嘩に口を挟むためじゃない。ここからが本題だ」
「え……? 本題、ですか……?」
ガラリと変わった律先輩の真剣な空気感に、私は思わず背筋を正した。
「最近の君の周囲の動向についてだ。……紬、君のその男装、一部の生徒にバレそうになっているんじゃないかい? 本当に大丈夫なのかね」
「――っ!?」
心臓がドクリと大きな音を立てて跳ね上がった。
あの意地悪な女子ライバルに放課後の廊下で写真を突きつけられ、ボタンを外されかけたあの絶体絶命のピンチ。
そして、さっき一ノ瀬くんがそのライバルを強引に追い払った一幕。
律先輩は、それら全ての『不穏な影』を、生徒会長としての情報網でとうに察知していたのだ。
「お前がこの学校で『イケメンのツムギ』として完璧に振る舞ってくれる分には、俺も生徒会として大目に見れる。けど、全校生徒にその秘密が漏れるとなれば話は別だ。学校中が大騒ぎになるのは目に見えている」
律先輩は一歩、また一歩と私に近づき、真剣そのものの冷ややかな眼差しで私を見下ろした。
「お前の隣にいるあの一ノ瀬が、どれだけ腕っぷしが強かろうと、全校生徒の噂や悪意からあんたを物理的に守り抜くことは不可能。……俺の言っている意味が、分かるよな?」
それは冷徹な脅しであると同時に、私のことを彼なりに冷静に案じている、厳格な忠告でもあった。
「……まぁいい。俺がわざわざここまであんたを呼び止めたのは、そんな子供の痴話喧嘩に口を挟むためじゃない。ここからが本題だ」
「え……? 本題、ですか……?」
ガラリと変わった律先輩の真剣な空気感に、私は思わず背筋を正した。
「最近の君の周囲の動向についてだ。……紬、君のその男装、一部の生徒にバレそうになっているんじゃないかい? 本当に大丈夫なのかね」
「――っ!?」
心臓がドクリと大きな音を立てて跳ね上がった。
あの意地悪な女子ライバルに放課後の廊下で写真を突きつけられ、ボタンを外されかけたあの絶体絶命のピンチ。
そして、さっき一ノ瀬くんがそのライバルを強引に追い払った一幕。
律先輩は、それら全ての『不穏な影』を、生徒会長としての情報網でとうに察知していたのだ。
「お前がこの学校で『イケメンのツムギ』として完璧に振る舞ってくれる分には、俺も生徒会として大目に見れる。けど、全校生徒にその秘密が漏れるとなれば話は別だ。学校中が大騒ぎになるのは目に見えている」
律先輩は一歩、また一歩と私に近づき、真剣そのものの冷ややかな眼差しで私を見下ろした。
「お前の隣にいるあの一ノ瀬が、どれだけ腕っぷしが強かろうと、全校生徒の噂や悪意からあんたを物理的に守り抜くことは不可能。……俺の言っている意味が、分かるよな?」
それは冷徹な脅しであると同時に、私のことを彼なりに冷静に案じている、厳格な忠告でもあった。


