『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

勝ち誇ったように笑う彼女の前に、一ノ瀬くんが地響きがしそうなほど低い足取りで一歩踏み出した。

彼の大きな身体が私の視界を完全に覆い隠し、周囲の空気が一瞬で凍りつくのが分かった。

「おい」

一ノ瀬くんの声は、怒鳴るようなものではなかった。

だけど、低く、冷徹で、聞いた瞬間に背筋が凍りつくような圧倒的な威圧感を孕んでいた。


「……っ」

さっきまで余裕しゃくしゃくだった彼女の表情が、一ノ瀬くんの放つ本気の凄みに押されて、一瞬でピクリと強張る。


「テメェがコソコソ嗅ぎ回って、引き出しにゴミ入れてんの、全部気づいてんだよ」

一ノ瀬くんはポケットに手を突っ込んだまま、冷酷なまでに冷え切った瞳で彼女を上から見下ろした。

その眼差しは、他校のヤンキーを相手にしている時よりも何倍も容赦がなかった。

「その薄汚いスマホに何が写ってんのか知らねぇが……。それ以上ツムギにちょっかい出してみろ。女子相手だろうが、俺は一切容赦しねぇからな」

「な、何よ……。脅すわけ? 私がこの写真を流したら、困るのはそっちの――」

「流せるもんなら流してみろよ」

一ノ瀬くんは彼女の言葉を冷たく遮り、フンと鼻で笑った。

一歩も引かないどころか、さらに彼女との距離を詰め、逃げ場をなくすように圧力をかける。


「全校生徒にお前のその陰湿な顔がバレるのが先か、俺がテメェを徹底的に叩き潰すのが先か、試してみるか? ……ツムギの隣は俺の場所だ。これ以上あいつに触れたら、タダで済むと思うなよ」

「――っく……!」

一ノ瀬くんの本気の狂気と、恋人を守るための圧倒的な独占欲に気圧され、彼女は顔を真っ青にして一歩、また一歩と後退りした。スマートフォンの画面を握る指先が、恐怖で小さく震えている。

「……覚えてなさいよ」

捨て台詞のようにそれだけ言い残し、彼女は逃げるように足早に去っていった。

コツコツと響くローファーの音が遠ざかるのを待ってから、一ノ瀬くんは深く大きなため息を吐き出し、ゆっくりとこちらを振り返った。

その瞬間、さっきまでの獣のような怖い表情は一瞬で消え去り、いつもの不器用で優しい、愛おしい彼に戻っていた。


「……わりぃ、紬。怖かったか?」

大きな手が、私の肩を優しく引き寄せる。

その頼もしすぎる彼の背中を見つめながら、私は恐怖なんて忘れて、ただただ胸を激しく高鳴らせていた――。