『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

スポーツ祭が幕を閉じ、翌朝の登校風景は、いつも通りの日常に戻ったように見えた。


「ツムギ様、おはようございます!」

「昨日のリレー、本当に最高でした……!」

校門をくぐれば、いつもと変わらない女子たちの黄色い歓声が私を包み込む。

いつもの完璧なイケメン『ツムギ』として王子様スマイルを返しつつも、私の胸の奥は、昨日とは全く違う、心臓が溶けてしまいそうなほどの甘い幸福感で満たされていた。


私……本当に一ノ瀬くんと付き合うことになったんだ……


思い出すだけで、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。


「俺が守る」と言ってくれた一ノ瀬くんと、私たちは昨日、誰にも言えない秘密の『恋人』になったのだ。

「おい、ツムギ」

背後から、低くぶっきらぼうな声が響く。

振り返ると、そこにはカバンを片方の肩にひっかけ、少しだけ右足を庇うように歩いてくる一ノ瀬くんの姿があった。


「あ……一ノ瀬くん、おはよう! 足、大丈夫……?」

周りにはたくさんのファンの女の子たちがいる。

いつもなら、ここで目を逸らされて、冷たくすれ違ってしまっていた。だけど、今日の一ノ瀬くんは違った。


「おう、おはよう。捻挫なんて一晩寝たら治るっつーの」


彼はフイッと少し照れくさそうに顔を背けながらも、全校生徒が見ている前で、私の頭をぽんと軽く小突いて通り過ぎていった。

そして、周りの女子たちに聞こえないくらいの超至近距離ですれ違う一瞬、彼がボソッと耳元で囁いたのだ。


「……はよ。昨日ぶり、だな」

「――っ!?」

心臓が跳ね上がる。


ただの「おはよう」なのに、昨日恋人になったばかりの彼から言われると、特別な意味がこもっているみたいで全身が熱くなる。

一ノ瀬くんの耳の端も、やっぱり少しだけ赤い。


「キャーッ! 一ノ瀬くんがツムギ様に触った……!?」

「二人の距離感、やっぱり尊すぎる……っ!」


周りの女子たちが勝手に大興奮してキャーキャーと騒ぎ始める。

一ノ瀬くんは「うるせぇよ」とボソボソ呟きながらも、私のことを置いていかずに、少しだけ歩幅を緩めて一緒に歩いてくれている。

学校では『親友の男友達』。でも、本当は『恋人同士』。


このドキドキする秘密の関係に、私は胸をいっぱいにしながら、彼と並んで校舎への階段を上った。

だけど、私たちが並んで歩いていくその姿を、昇降口の陰から、酷く冷淡な瞳で見つめている存在がいた。

同じクラスの、あの意地悪な女子ライバルだ。

彼女は手の中のスマートフォンを強く握りしめ、楽しそうに口元を歪めている。