『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

『午後の競技、ちゃんと見てろよ。終わったら、校舎の裏で待ってろ』

という、一ノ瀬くんが残してくれたその言葉が、私の心にこれ以上ないくらいの爆発的なパワーをくれた。

午前中のあの冷たいすれ違いが嘘みたいに、胸の奥がポカポカと熱い。もう、迷いも不安も何一つなかった。


午後の最初の種目は、全校女子が最も熱狂する『クラス対抗障害物競走』

私はクラスの期待を背負って、第一組のスタートラインに立っていた。


「ツムギ様――っ!! 頑張って――!!

「ツムギくん、怪我しないでね――っ!!」


グラウンドを揺るがすような黄色い大歓声。

午前中なら「目立ちすぎて怖い」と萎縮していたはずのその声が、今の私には心地いい追い風にしか聞こえない。

私はいつもの王子様スマイルではなく、一人のアスリートのような、不敵で、だけど最高に楽しそうな笑みを浮かべて前を見据えた。

パァン――ッ!!

ピストルの音と同時に、私は爆発的なダッシュで飛び出した。

最初のハードルを、驚くほど華麗な跳躍で次々と飛び越えていく。

ウィッグがズレないか一瞬不安がよぎるけれど、そんなの気にならないくらい体が軽い。


「う、嘘でしょ!? ツムギ、速すぎる……っ!!」

実況の生徒がマイク越しに絶叫する。

網くぐりも、麻袋ジャンプも、私は一切の躊躇なく泥臭く、だけど誰よりも真っ直ぐに、圧倒的なスピードでクリアしていく。

ただ女子にチヤホヤされるための『ツムギ』じゃない。クラスのために、そして何より、どこかで私の姿を見つめているはずの『彼』に、私の本気を見せるために。

最後の障害物であるパン食い競争のエリアに飛び込んだ瞬間、私は大きく跳躍し、一発でパンをくわえとった。

そのまま、誰にも影さえ踏ませない圧倒的な独走状態で、ゴールのテープへと飛び込む。


「ゴ、ゴール――ッ!! 1位は圧倒的な強さで3年B組、ツムギくんだあああ!!」

グラウンド中がひっくり返ったような、凄まじい歓声と拍手が巻き起こる。

ファンの女の子たちが嬉しさのあまり泣き崩れ、クラスの男子たちが「マジかよお前、神か!?」と私に駆け寄ってきてハイタッチの嵐になる。


「はぁ、はぁ……っ! みんな、ありがとう!」


汗だくになりながら、私は前髪をグッと手首で拭い、そのまま本部テントの前にいる『彼』の姿を探した。

一ノ瀬くんだ。

彼は、男子たちに揉みくちゃにされている私を、遠くからじっと見つめていた。

その口元には、呆れたような、だけどどこか誇らしそうな、最高に優しい笑みが浮かんでいる。

目が合った瞬間、彼は小さく親指を立てて、私に『よくやった』と合図を送ってくれた。
胸がドクンと甘く跳ね上がる。


午後の部は、まだ始まったばかり。

一ノ瀬くんとの約束の夕暮れに向かって、私の大活躍はここからさらに加速していくのだった――。