『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

「……なんだよ」


一ノ瀬くんは低く、ぶっきらぼうな声でそう言った。

手元にあるスポーツドリンクの缶を見つめたまま、頑なに私と目を合わせようとしない。

学校でずっと無視され続けていたから、話しかけるのは正直すごく怖かった。

だけど、あのサッカーの時の彼の真剣な姿を見て、私の胸はまだ熱く震えていた。


「サッカー、すごく……格好よかった。フェンスにしがみついて、夢中で応援しちゃった」

私の言葉に、一ノ瀬くんはふいっと視線をさらに斜め下へと逸らした。


自動販売機の裏から、遠くのグラウンドの賑やかな声がかすかに聞こえてくる。二人の間に、少しだけ重苦しい沈黙が流れた。


「……お前さ」

長い沈黙を破り、一ノ瀬くんがぽつりと言葉を零した。

その声は、どこか酷く苛立っているようで、同時に切なく震えているようにも聞こえた。


「いつまで、そうやって一人で完璧なフリしてんだよ」

「え……?」

一ノ瀬くんは缶を強く握りしめ、ゆっくりと顔を上げて私の目を真っ直ぐに見据えた。

その瞳の奥には、張り詰めたような心配と、微かな怒りが混ざり合っている。


「周りの女子たちに疑われそうになって、今だっていつ正体がバレるか分かんねぇくらい、ギリギリのところにいるんだろ。あの放課後だって、お前がアイツに絡まれてたの……俺、遠くから見てた」


「……っ!?」

心臓がどきっと跳ね上がる。

あの放課後、意地悪なライバルに壁に押し付けられてボタンを外されたあの瞬間を、一ノ瀬くんは知っていたのだ。


「なのに、お前は俺に何も言わねぇし、助けも呼ばねぇ。学校じゃいつも通り女子に囲まれて、楽しそうにハーレム状態作って笑って……」

そこまで言って、一ノ瀬くんは悔しそうに一度言葉を詰まらせた。

「……俺じゃ、お前の心配すらさせてもらえねぇのかよ」

ポツリと溢れた彼の本音は、すれ違って冷たくなっていたはずの彼の、不器用で、痛いくらいに真っ直ぐな優しさそのものだった。


頼ってほしいのに、周りの目が邪魔をして近づけない。そんなもどかしさと独占欲に、私は言葉を失って立ち尽くしてしまったんだ――。