『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

あの放課後の恐怖から数日。

意地悪な彼女に秘密を握られたという目に見えない爆弾を抱えたまま、学校は一気に慌ただしい空気に包まれていった。

秋のビッグイベント――『全校学園スポーツ祭』のシーズンがやってきたのだ。


「キャーッ! ツムギ様、こっち向いてー!」

「今日の体操着姿も、反則的なカッコよさ……!」


グラウンドに一歩足を踏み入れるだけで、割れんばかりの黄色い歓声が私を包み込む。

男装女子としての生活にも慣れてきた私だったけれど、この学校行事という特別な舞台は、私の『イケメンっぷり』を意図せずさらに大爆発させてしまっていた。

何気なく前髪をかきあげたり、競技の作戦を真剣な目で話したりするたびに、周りの女子たちがバタバタと卒倒しそうになっている。

私の人気は日に日に過熱していき、今や移動するだけでも、私の周りをガッチリとガードするような『女子の親衛隊』が自然と結成されるまでになっていた。


う、嬉しい……。嬉しいけど、目立ちすぎて心臓がもたないよ……っ!

王子様スマイルをキープしながら、私の背中には冷や汗が流れていた。

目立てば目立つほど、あの放課後に握られた『スマホの写真』の存在が頭をよぎる。あのライバルの女の子は、遠くからニヤニヤと私を観察していて、いつあの爆弾を全校生徒に破裂させるか分かったものじゃない。


そんな狂乱のような賑わいの中で、私の視線は、どうしてもグラウンドの隅っこを探してしまう。

クラスの男子たちと、気怠そうにテントの影に座っている一ノ瀬くん。

体操着の袖を無造作にまくりあげた彼の大きな背中は、やっぱりすごく格好よくて、目を奪われてしまう。


「あ……」

ふいに、一ノ瀬くんがこちらを振り向いた。

バチッと視線が交差する。


私の心臓がドクンと跳ね上がり、一ノ瀬くん!と声をかけようと一歩踏み出した。

けれど――彼はすぐにフイッと冷たく目を逸らし、隣の男子の肩を叩いて別の場所へと歩き去ってしまった。


「……っ」

胸の奥が、ズキリと疼く。

あの夕暮れの帰り道から、私たちのすれ違いはまだ続いたままだ。

学校行事で女子たちに囲まれてハーレム状態になればなるほど、一ノ瀬くんの瞳はどんどん冷たくなっていく気がする。

正体がバレるかもしれない恐怖と、一番近くにいてほしい人とのすれ違い。


2つの切なさを抱えたまま、私の運命を大きく狂わせるスポーツ祭の幕が、ついに切って落とされた――。