『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

第二ボタンに彼女の指が、容赦なくかかる。

生地が引っ張られ、私の鎖骨のラインが露わになりかけた。

男の子にしてはあまりにも華奢すぎる肩のラインが、夕暮れの光に晒されそうになる。


もう、ダメだ……っ!

恐怖でぎゅっと目を瞑った、その瞬間だった。


「――あれ? 昇降口の方から声が聞こえない?」

「キャー! もしかしてツムギ様まだ残ってるんじゃ……!?」

遠くの角の向こうから、聞き馴染みのある女子生徒たちの賑やかな話し声と足音が、廊下に響き渡った。


「――っ!?」

私を壁に押し付けていた彼女の身体が、ビクリと強張る。

ファンの子たちが一斉にこちらへ向かって歩いてくる気配に、彼女はチッと不機嫌そうに舌を鳴らし、慌てて私から手を離してスマートフォンの画面を隠した。


「ツムギ様ー! お疲れ様です……って、あれ?」


角を曲がってきた数人のファンの女の子たちが、私たちの異様な雰囲気に気がついて足を止める。

私のボタンが外れ、壁に背を預けて肩で息をしている姿を見て、ファンの子たちの目が一瞬で鋭くなった。


「ちょっとあんた、ツムギ様に何してんの……?」

「もしかして、ツムギ様を困らせてたわけ!?」

「な、何よ……。別に、ちょっとお喋りしてただけじゃない」


形勢が逆転し、大勢のファンの子たちに睨みつけられた彼女は、バツが悪そうに一歩後退りした。

だけど、すれ違いざまに私にだけ聞こえる低い声で、冷酷に呟いたのだ。


「今回は運が良かったね、ツムギくん。……でも、この写真は消さないから。次は、言い逃れできないようにしてあげる」


コツコツとヒールの音を響かせて去っていく彼女の背中を、私はただ呆然と見つめることしかできなかった。


「ツムギ様、大丈夫ですか!?」

「あいつ、何か酷いこと言ってきたんですか?」

心配そうに駆け寄ってくるファンの子たちに、私は震える手でなんとか胸元のボタンを留め直しながら、引きつった笑顔を浮かべた。


「う、うん……ありがとう。ちょっと、お話してただけだから、大丈夫だよ……」


ファンの子たちのおかげで、最悪の事態だけはギリギリのところで免れた。


だけど、私の秘密の証拠は、完全にあの意地悪なライバルの手に握られてしまったのだ。