『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

夕暮れの光が差し込む誰もいない廊下で、彼女の言葉が冷酷に響き渡る。

差し出されたスマートフォンの画面には、昨日、私の胸に顔を埋めて震えていた一ノ瀬くんと、それを優しく受け止めている私の姿が鮮明に写し出されていた。


男のフリをしているという決定的な疑惑。

もしこれを今バラされたら、私の完璧な学園生活も、楽しかったハーレム状態も、すべてが一瞬で海の藻屑と化す。


「どうしたの? 早くしなよ。男だって言うなら、別に服を脱ぐくらい、どうってことないでしょ?」


フフ、と意地悪に笑いながら、彼女が一歩、また一歩と距離を詰めてくる。

心臓が口から飛び出しそうなほど激しく脈打っていた。頭の中が真っ白になって、言い訳の言葉さえ一つも浮かんでこない。

誰か……誰か助けて……!

心の奥底で、小さな悲鳴が上がる。

脳裏をよぎったのは、昨日までなら絶対に私を助けてくれたはずの、あの大きな背中だった。


だけど、今日の一ノ瀬くんは私を冷たく無視して、目さえ合わせてくれなかった。

今、私たちがどんなに激しくすれ違っているかを思い知らされて、胸の奥がツンと痛む。

一ノ瀬くんは来ない。ここに彼はいないし、もしいたとしても、今の彼は私を助けてなんてくれないかもしれない。

頼れる人は、誰もいない。私は、たった一人だった。


「……なんの、ことかな」

私はカサカサに乾いた喉を鳴らし、なんとか声を絞り出した。

ポケットの中で、恐怖に震える拳をぎゅっと握りしめる。

いつもの『ツムギ』としての完璧な余裕を必死に演じ直そうと、引きつりそうな広角を無理やり上げた。


「ただの友達とのハグでしょ? それとも君は、男同士の熱い友情に嫉妬でもしてるの?」

「は? 白々しい。男同士の友情で、そんな女の子みたいな顔するわけないじゃん」

私の苦しい言い訳を、彼女は一蹴する。

そして、私の胸元へと容赦なく白い手を伸ばしてきた。制服のシャツのボタンを、無理やり引きちぎろうとするかのように。


「ひっ……!」

私は思わず声を上げて、一歩後ろへよろめいた。

背中に冷たい壁がぶつかる。もう逃げ場はなかった。

一ノ瀬くんとのすれ違いに心を痛めていた直後の私に、あまりにも残酷で、そして逃げ出すことの許されない本当の『絶体絶命』が、牙を剥いて襲いかかっていた――。