『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

結局、その後の授業中も、一ノ瀬くんとは一言も言葉を交わすことができなかった。

放課後になり、教室が少しずつ静まり返っていく。私はいつものように女子たちから部活の応援や下校の誘いを受けたけれど、今日だけは

「ちょっと用事があって」と、笑顔で全て断った。

一ノ瀬くんの機嫌を直したかった。でも、当の本人は、終礼のチャイムが鳴ると同時に、カバンを掴んで教室を飛び出していってしまったのだ。


「はぁ……。どうしよう」

誰もいなくなった教室で、私はぽつりと溜息をもらす。

女子にモテまくる、夢のようなスクールライフ。それは確かに手に入ったけれど、その代償のように、一ノ瀬くんとの関係が少しずつ歪んでいくような気がして怖い。


男装女子としての私の、唯一の安全基地だった彼の存在が、今は何よりも私の心を揺さぶっている。

カバンを肩にかけ、トボトボと廊下を歩き出す。

夕日に染まる校舎は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。一刻も早く家に帰って、ベッドに潜り込んでしまいたかった。

「ずいぶんと寂しそうな顔をして歩いてるな、ツムギくん」

背後から響いたその声に、私の身体は瞬時に硬直した。振り返るまでもない。

この、低くて、どこか人を小馬鹿にしたような、それでいて圧倒的なオーラを纏った声の主は、間違いなくあの人だ。

「り、律先輩……」 

恐る恐る振り返ると、そこには夕闇の中で不敵に微笑む、生徒会長の姿があった。