『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

 教室のドアを開けた瞬間、それまでの重苦しい緊張感が、一気にお祭りのような喧騒にかき消された。


「あ! 蓮くん、おかえりーっ!」

「どこ行ってたの? 次の休み時間、一緒に購買の限定パン買おうって約束したじゃん!」 


席に着く暇さえ与えられない。待っていましたとばかりに、クラスの女子たちが満面の笑みで私を包み込んでいく。

「あはは、ごめんごめん。ちょっと一ノ瀬くんと話し込んでてさ。購買のパン、もちろん一緒に行くよ」 

私はすぐにいつもの完璧な『蓮』としてのスイッチを入れ、女子たちが喜びそうな甘い微笑みを繰り出した。

「きゃー! やったぁ!」

女の子たちの華やかな香りと、私を真っ直ぐに見つめてくれる純粋な瞳。これだ。私が欲しかった、誰からも一目置かれる最高の学園生活。女子にモテてチヤホヤされるこの空間こそが、私の居場所のはずだった。 

内心でガッツポーズを連発しながらも、私はふと、数歩離れた自分の席へと視線をやった。そこには、頬杖をついたまま、窓の外を不機嫌そうに眺めている一ノ瀬くんの姿があった。

彼は私に群がる女子たちに一切目を向けようとしない。けれど、その握りしめられた左手が、机の上で微かに震えているのを私は見逃さなかった。


一ノ瀬くん……

女子たちに囲まれる至福の時間のはずなのに、なぜか私の意識は、遠く離れた彼の横顔にばかり引っ張られてしまう。


完璧なハーレムの中心にいるはずなのに、胸の奥をチクチクと刺すような、妙な焦燥感がどうしても消えてくれなかった。