『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

律先輩の気配が完全に消え去り、渡り廊下に再び静寂が戻ってきた。

一ノ瀬くんの広い背中を見つめたまま、私はようやく深く息を吐き出す。

「……一ノ瀬くん、ありがと。職員室、もう終わったの?」

なんとか蓮としての低いトーンに整えながら、私は彼のブレザーの袖をそっと引いた。

すると、一ノ瀬くんは勢いよく振り返り、私の両肩をがっしりと掴んんだ。

その瞳には、焦燥と、奪われたくないという、独占欲が渦巻いているのがわかる。


「お前、バカ? あの人がどれだけ危険か、分かってねえだろ」

「え、あ、でも、別に何もされてないし……」

「されてからじゃ遅えんだよ!」


廊下に響き渡る彼の怒鳴り声に、私は思わず身体を竦めた。一ノ瀬くんの大きな手が、私の肩に少し痛いくらいの力で食い込んでいく。

「……悪りぃ。痛かったか」

私が顔を顰めたのに気付いたのか、彼はすぐに力を緩め、バツが悪そうに手を離した。そして、片手で自身の前髪を乱暴にかきむしる。

「俺がいない間に、アイツとお前が2人きりだったと思うと……まじでイライラする」

低く呟かれたその言葉に、私の胸がトクン、と大きく跳ね上がった。 これって、もしかして……嫉妬、なのだろうか。

男装がバレて以来、一ノ瀬くんはいつだって私を守ろうとしてくれるけれど、今の彼の態度は、ただの『秘密の共有者』の枠を完全に超えている気がしてならない。

「ほら、戻るぞ。教室。……俺から離れんなよ」

ぶっきらぼうに背を向けた一ノ瀬くんの耳が、真っ赤に染まっているのを、私は今度こそはっきりと視界に捉えていた。