触れ合いそうなほど至近距離にある律先輩の唇。そこから溢れる熱い吐息が、私の肌をじりじりと灼いていく。
「どうした、紬。いつもの威勢の良さはどこ行ったんだよ」
不敵に目を細めた先輩の手が、私の顎をさらに上向かせる。心臓がうるさいほど脈打ち、立っているのさえやっとだった。
だめ、これ以上は本当に──
恐怖と、それ以上に脳を痺れさせるような甘い緊張感に押し潰されそうになった、その時。
「──そこまでにしてください、生徒会長」
廊下の向こうから、鋭く、冷徹な声が響き渡った。
弾かれたように視線を向けると、そこには肩を激しく上下させ、額にうっすらと汗をにじませた一ノ瀬くんが立っていた。
職員室へ行ったはずの彼が、異様なまでの早さでここへ戻ってきたのだ。
「一ノ瀬くん……っ」
彼の姿を見た瞬間、張り詰めていた私の涙腺が、決壊しそうになるほどの安堵感に包まれる。
一ノ瀬くんは驚くほどの歩幅でこちらへ詰め寄ると、律先輩の手を強引に振り払い、私の身体を自分の背後へと力強く引き込んんだ。
「用件なら、俺が代わりに聞きます。そいつにこれ以上、用はないはずだ」
一ノ瀬くんの背中越しでも、彼が全身を怒りで強張らせているのがよく分かった。
「へえ……。ずいぶんと素早いお着きだな、一ノ瀬」
手を離された律先輩は、特に怒る風でもなく、ただ面白そうに自身の掌を見つめてから、私達を交互に見つめて不敵に笑った。
「まあいいさ。今日のところは、このくらいで勘弁してやるよ」
先輩はそう言って、私にだけ分かるような意味深なウインクを投げかけると、何事もなかったかのように悠然と歩き去っていった。
その足音が遠ざかるのを、私達はただ黙って見送るしかなかった。
「どうした、紬。いつもの威勢の良さはどこ行ったんだよ」
不敵に目を細めた先輩の手が、私の顎をさらに上向かせる。心臓がうるさいほど脈打ち、立っているのさえやっとだった。
だめ、これ以上は本当に──
恐怖と、それ以上に脳を痺れさせるような甘い緊張感に押し潰されそうになった、その時。
「──そこまでにしてください、生徒会長」
廊下の向こうから、鋭く、冷徹な声が響き渡った。
弾かれたように視線を向けると、そこには肩を激しく上下させ、額にうっすらと汗をにじませた一ノ瀬くんが立っていた。
職員室へ行ったはずの彼が、異様なまでの早さでここへ戻ってきたのだ。
「一ノ瀬くん……っ」
彼の姿を見た瞬間、張り詰めていた私の涙腺が、決壊しそうになるほどの安堵感に包まれる。
一ノ瀬くんは驚くほどの歩幅でこちらへ詰め寄ると、律先輩の手を強引に振り払い、私の身体を自分の背後へと力強く引き込んんだ。
「用件なら、俺が代わりに聞きます。そいつにこれ以上、用はないはずだ」
一ノ瀬くんの背中越しでも、彼が全身を怒りで強張らせているのがよく分かった。
「へえ……。ずいぶんと素早いお着きだな、一ノ瀬」
手を離された律先輩は、特に怒る風でもなく、ただ面白そうに自身の掌を見つめてから、私達を交互に見つめて不敵に笑った。
「まあいいさ。今日のところは、このくらいで勘弁してやるよ」
先輩はそう言って、私にだけ分かるような意味深なウインクを投げかけると、何事もなかったかのように悠然と歩き去っていった。
その足音が遠ざかるのを、私達はただ黙って見送るしかなかった。

