『イケメンになりたい!』で始めた学校生活、モテすぎてハーレム状態!?もう戻れない...

その場に立ち尽くしたまま、私はただ、自分の身に起きたことを呆然と受け止めることしかできなかった。

頭の芯がじわじわと熱くなっていく。心臓の音が耳の奥でうるさいくらいに打ち鳴らされ、あまりのショックに呼吸の仕方を忘れてしまいそうだった。

さっき、すれ違いざまにわざとらしくぶつかってきた女子グループ。彼女たちの目は、これまでのファンとしてのキラキラしたものではなくて、明らかな嫉妬と悪意に満ちていた。

『あはは、ごめーん! 手が滑っちゃった!』

わざとらしい甲高い笑い声と共に、頭から浴びせられた冷たい水。昨日まで私が必死に守り、積み上げてきた学校での「日常」が、嫉妬という名の悪意によって音を立てて崩れ去っていく。

「おい、紡。……何集まってんだよ、お前ら」

その時、人だかりを割るようにして、低く鋭い声が響き渡った。現れた一ノ瀬くんは、険しい表情のまま私の手首を強く掴むと、周囲の女子たちを鋭く睨みつけ、そのまま有無を言わせず私を引っ張って歩き出した。

人気のない渡り廊下まで連れてこられたところで、ようやく彼は足を止めた。そして、私の手を掴んだままの自分の手のひらを見つめ、怪訝そうに眉をひそめる。

「……なぁ、お前、なんでこんなに濡れてんだよ」

一ノ瀬くんに掴まれていた私の制服の袖口からも、髪の毛の先からも、冷たい水滴がぽたぽたと床に落ちていく。

「あ……えっと、これは……」

言い渋る私の肩を、一ノ瀬くんが今度は両手でがっしりと掴んだ。覗き込んできた彼の瞳には、いつもの意地悪な余裕なんてひとかけらもなくて、焦りと、見たこともないほどの心配の色が滲んでいる。

「冷てぇよ、体まで震えてるじゃねぇか。おい、隠さずに言え。……誰に何をやられた?」