「……よし。これで、完璧」
鏡の前に立つ私は、思わず自分の口から漏れた声の低さに驚いた。
そこに映っているのは、サラサラの黒髪が目を引く、どこからどう見ても中性的な超絶イケメン。
……うん。我ながら、めちゃくちゃカッコいい。でもね?驚かないで聞いてほしい。
ウィッグを被り、胸にナベシャツ(胸を平らにする下着)を巻き、最新のメンズメイクで激変を遂げたこの人物の正体は――私、小鳥遊 紬(たかなし つむぎ)、16歳。れっきとした女子高生、です。
なぜ、普通の女子高生だった私がこんな男装をしているのか。
理由はただひとつ。――女子の世界で、圧倒的にモテたかったから!!男子にモテるなんて、もう古い! 私は、女の子たちから『キャーキャー』言われる存在になりたいの!
中学時代、地味で目立たなかった私は、いつもクラスの可愛い女子たちが女子グループの中心でチヤホヤされているのを羨ましく眺めていた。
でも、私が今からあんな風に可愛くなるのは無理。
だったら……いっそのこと『理想のイケメン』になって、女子たちの憧れの的になってやろう!
『イケメンになりたい!』その一心で、髪型、声のトーン、立ち振る舞いまで、血の滲むような研究を重ねてきたのだ。
誰も自分を知らない、新設の共学校への進学。
それは、私の『女子モテ無双ライフ』のスタートライン。
・もしかして私、男装似合うのでは?(※はい、100点満点中1万点レベルで似合います)
・今日から学校でモテまくるのでは?(※はい、全校生徒を狂わせるレベルでモテます)
「待ってろ、最高のハーレム生活……!」新しい制服のズボンに足を通し、私は希望に胸を膨らませて家を飛び出した。
まさか、この不純な理由で始めた男装のせいで、次々にイケメン男子たちに正体がバレていく波乱万丈な運命が待っているなんて、この時の私は知る由もなかったんだ――。

