白手 憂怜の怖いお手紙


それぞれが頼んだメニューが届き、箸へと手を伸ばしました。

娘は注文した定食のお味噌汁をすすり、一息つきました。


「その白無垢の人ね、いつも顔は見えんのよ」


白無垢の女性は、私達が来ていたお墓から遠く離れた場所をゆったりと歩いていたそうです。

足音はもちろん聞こえなくて、“いた”と思ったらいつの間にか消えてしまうと娘は言います。


「でも、一度だけその女の人があたしを見てた時があったんよね」


山の奥で歩みを止め、自分へと向き直った白無垢の女性。

それが子供だった娘には怖かったそうで、それ以来あの山が不気味に覚えて仕方ないそうです。


「その時ってなんかあったん?ケガしたとか、いつもと違う事がなんかあったんやないん?」


明らかに異質な存在。

何か悪い事を暗示しているのではと思い、娘にそう聞きました。

旦那と息子は早々に飽きてしまったのか食事に夢中でしたが、視線は娘をチラチラと見ていて気にはなっている様子です。


「そういえば……あの時だけユウキんとこの家族もいた気がする」


ユウキ。

懐かしい名前にその場にいた全員が「いたなぁ」と頷きました。

娘が大学に上がるまで、ずっと私達の隣の家に住んでいた家族の事です。

ユウキ君はその家族の一人息子で、娘と同じ年の男の子でした。