白手 憂怜の怖いお手紙


すぐに目を逸らし、その場を通り抜けました。

その日はそれで終わったのですが……翌日。

学校に向かう私の目の前に、その赤い女の人は再び現れました。

十字路の曲がり角に、彼女が立っています。

正確に言うと、目視できたのは赤いコートの端だったのですが……それだけで充分でした。

ぶわりと粟立つ肌と、薄ら寒い気配を感じながらその横を通り過ぎます。

肩を丸めて視線をコンクリートの地面に落とすと赤い女の人のヒールが見えました。

その爪先は……こちらを向いています。


「……あ……あ……」


耳元で小さく掠れた声が聞こえて、心臓が跳ね上がりました。

夏場の太陽が照らすその下。

その場所だけが、まるでクーラーをつけているかのように冷えきっていました。

転びそうになりながら走って学校に向かい、下駄箱で乱れた呼吸を落ち着けます。

ふと、校門へ視線を移すとあの女がいました。

赤いコートに赤いヒール。

相変わらず長い黒髪で顔は分かりません。

でも、私を見ていると直感で分かりました。

こんなに目立つ格好の人間がいれば、普通は不審に思うでしょう。

ですが登校する他の生徒達は、誰も彼女の存在に気づいていません。

これで赤い女の人が“人間”だという僅かな可能性は、限りなく低くなってしまいました。