「ちょっとあんた!急に飛び出したら危ないだろ!」
僕は目前で停車する車の中から、怒声を放つおじさんを凝視していました。
車の走行音なんて全く気がつかなかったんです。。
さっきの“けたたましい音”が、車の急ブレーキをかけた音だと気づき慌てて運転席に駆け寄りました。
「た、助けてください!変な女が!」
「へ、変な女!?」
僕の慌てようを見たおじさんが車から降りてきてくれて、僕が指差す方向……トンネルを見渡しました。
そして呆れたように言ったんです。
「誰もいないじゃねえか」
「えっ?」
トンネルを見ると、あの女の人はどこにもいませんでした。
ずっとトンネルに立っていたのに。
まるで最初からいなかったみたいに、どこにもいなかったんです。
気づけば、あんなに降っていた雨も止んでいました。
「兄ちゃん、大丈夫か?具合でも悪いんか?」
血の気が引いた僕を、おじさんは図書館まで車で送ってくれました。
その時に聞いたのですが、数年前にあのトンネルで衝突事故があり亡くなった人がいたそうです。
あの女の人が、その犠牲者だったんでしょうか。
それ以来、僕はあのトンネルを利用していません。
今でもあの女の人は、あそこに立っているのでしょうか?
調べる事も、怖くてできません。
これで僕の話は終わりです。
皆さんも、トンネルで佇む人には気をつけて。



