白手 憂怜の怖いお手紙


黒い長袖のワンピースに、ツバの広い真っ黒な帽子を目深に被った女の人。

着ている服もいつも同じなため、すっかり覚えてしまっていました。

こんな蒸し暑い日にも長袖だなんて、変な人だな。

そんな事を思いながら、僕は軽く会釈だけして彼女の前を足早に通り過ぎます。

そうしてトンネルを抜けて目的の場所に着いた後は、違う道を通って家に帰る……それが日常でした。

だけどその日は、運が悪かったんです。

あと少しでトンネルを抜ける……その時、土の臭いが濃くなり土砂降りの雨が降ってきました。

僕はその場で空を見上げます。

トンネルの出口から見える空は分厚い雲におおわれた曇天で、ゴロゴロと雷の音が鳴っていました。

急いでカバンを探りましたが……生憎、カサは持ってきていません。

頭上に響く雨粒の音。

今外に出れば、借りていた本も濡れて汚してしまいます。

僕は後ろを振り返りました。

あの女の人が、暗い道の上に佇んでいます。

これは通り雨だ。

きっとすぐに止むだろうと、僕は彼女とトンネル内に留まる事を選びました。

それがあんな恐怖に繋がるなんて全く思いもせずに。