白手 憂怜の怖いお手紙


数メートルほど離れた場所から、知らないおじさんが僕を見つめていたんです。

当時の僕もそれにギョッとして、体を強張らせたのをよく覚えています。

ヘビに睨まれたカエルのように、おじさんと見つめ合った硬直状態が続きました。

おじさんが、一歩近づきます。

僕は持っていたオモチャから手を離しました。

おじさんが一歩、また一歩と近づいてきて僕は立ち上がり、オモチャ売り場を去ります。

後ろからスタスタと足音がくっついてきました。

僕は足を止めずに後ろを振り返りました。

無表情のおじさんが、何も言わずに僕の後ろを追いかけています。

僕は怖くなり、とにかく走りました。

角を曲がっても同じところをグルグル回っても、おじさんはついてきます。

ここまで追いかけられる意味も分からなくて、その時の僕はパニックでした。

日用品売り場に向かうと、お母さんの知り合いの店員さんがいて、僕はその方にしがみつきこう言ったんです。


「知らないおじさんが追いかけてくる!」


もう半泣きでした。

これはただ事じゃないと思ったのか、店員さんは僕を抱っこして人の多いレジへと運んでくれました。

店員さんの肩越しに見えた先、もうおじさんの姿は無くて…それがとても不気味だったんです。