僕のことが好きな2人

 僕のタイプは…ほんの一ミリだけ美織だ。雰囲気で選んだけど。…と言っても今まで好きな人なんかできたことないし、ただなんとなくだけど。

 朝の満員電車の中で透と昨日の話の続きをしながら学校へと向かう。
「仲を深める方法決まった?」
「うーん、まだなんだよなぁ。考えすぎて昨日全然寝れなかったし」
 周りにいる人々はみんなスマホを触るか、本を読むか、目を瞑っているか、何かをしている。僕は同じ学校の生徒が近くにいないかを確認して透の方に向き直った。
「そうだよな。でも返事は早い方が良いしな」
「うん...」
 二人の姿が頭の中に浮かぶ。選ぶって難しい。

 教室のドアを開けて、朝日が照りつける席に荷物を置く。日差しが嫌だからブラインドを下ろしていた。
「旬くん、昨日の話結局どっちにするか決めた?」
 葉名の声で僕は振り向く。隣には美織もいる。周りを見渡せば、状況を知らないクラスメイトがこっちを見て口々に話している。僕の顔は自然と赤くなる。それは僕だけじゃないと思うけど。
「めっちゃ今真剣に悩んでてさ」
「じゃあさ、一緒にデート行こうよ」
 美織が小さな声で言った。デートのと言う言葉に胸が跳ねる。
「私と旬くんで遊園地デートで、美織ちゃんと旬くんが水族館デートでどうかな」
「うん、二人が良いなら」
 僕の言葉で二人の顔が柔らかくなる。僕の緊張は止まらない。
「あと、月曜日と火曜日はお弁当持ってこないでね」と美織が言う。
 えっ、と僕は小さく呟く。
「私たちが作るから、絶対ね!」
 そんな映画みたいな展開ある...?訳が分からなくて、生きている感覚がない。
「じゃあとりあえずよろしくね。日は帰ってから連絡するね」
 じゃあ、と二人は友達のいる方へ去って行った。教室の視線が怖くて僕はとりあえずトイレに逃げた。

 金曜日の夕方の五時。交通量が増えてくるこの時間帯に、僕は自分の部屋のベッドに寝転んでスマホを見ていた。
 ストーリーには料理動画を見たからか、美味しそうな料理の作り方ばかり出てくる。最近ハマってるのが見たいのだけど。
 コメント欄を見ていた時、スマホの上の方に通知がピコンと来た。
 僕は送り主を見て思わず声が出た。…葉名だ。
(葉名:友達追加しました!早速だけどデートの予定決めても良い?)
 僕は開くことができずにプレビューで内容を確認する。隣に掛けてあるカレンダーに目を移した。今週も来週も予定はない。
 僕は思い切って開いて内容を打ち込んだ。少しだけ手が震える。
(旬:友達追加ありがとう。僕は今週も来週も土日空いてます。)
 何度か読み返して送信ボタンを押す。葉名はこのトークを開いたままだったのか、すぐに既読がついた。
 少し急だけど葉名と遊園地は明日で、その明後日が美織と水族館に行くことになった。眠れない夜が続きそうな、そんな予感がした。